高橋颯 撮影:友野雄

自分らしく生きること。それは、とてもシンプルで、とても難しいこと。だけど、私たちがもっとハッピーに生きていくために、自分らしさは欠かせない。

そんな“自分らしく生きること”の大切さを、とびきりポップに、どこまでもキュートに教えてくれるのがミュージカル『ジェイミー』だ。

主人公は、16歳の高校生・ジェイミー。彼には、ドラァグクイーンになるという夢があった。その第一歩として、高校のプロムに本来の“自分らしい”服装で参加しようと決意するが、その行く手には様々な偏見や迫害が待ち構えていた。

演劇の本場・イギリスで大ヒットしたミュージカルが日本初上陸。確かな実力とフレッシュさを兼ね備えたメンバーで華やかにお届けする。

そこで今回は、主人公・ジェイミー役を演じる高橋颯(※Wキャスト)にインタビュー。明るい笑顔が印象的な高橋にも、かつて自分らしさを抑圧されていると感じた時期があったーー。

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あの頃は、世界が狭かった

高橋颯 撮影:友野雄

――すごくメッセージ性のある作品ですが、高橋さんの胸に響いたのはどんなところですか?

ありのままでいいっていうところですね。

僕自身、個性を消されちゃうような感覚に陥っちゃうことがよくあったんですけど。個があって集団があるんだということに、いろんな人と向き合って、自分と向き合う中で気づきはじめて。

そういうことを伝えられるように、本番に向けて自分の中にあるものを磨いていきたいなと思っています。

――何か自分らしさを抑圧されているように感じていた時期があったということですか?

学生のときは常々感じていました。あの頃は世界が狭くて、教室の中がすべてだと思っていたので。

声も小さかったし、シャイというのもあって、自分の考えていることを発言もできなかったですし、クラスにもなじめなくて。

思春期と言ったらそれまでなんですけどね。感性が鋭すぎて情緒が安定しないというか。でも自分のプライドのせいか、落ち込んでも誰にも頼れない。

人前で落ち込む姿を見せておいて、次の日になったらけろっと笑顔でやってくるということができなかったんですよ、勇気がなかったから。

今思えば、たかだが30人の社会で何を悩んでいたんだろうと思うんですけど。そういう抑圧は確かに感じていましたね。

――そういう自分も自分らしさだと受け入れられるようになったのはいつ頃ですか。

いまだに受け入れられていないです(笑)。基本的に、できない自分を認められないんですよ。

――完璧主義なんですね。

そうかもしれませんね。あ、でも、以前、自分の弱さを認められずに悩んでいた時期に、グループのプロデューサーさんに言われたんですよ、「自分を過信しすぎだ」って。

そうか、自分の弱さを認められないのは、自分を信じすぎているからなんだって。そう考えられるようになってからは、弱い自分を多少認められるようにはなったかもしれないです。

ジェイミーは理想のエンターテイナー像

高橋颯 撮影:友野雄

――でもパフォーマーというのは大なり小なり本当の自分とは別に、表に出る用のきらびやかな虚像の自分を演じているものなのかなという気もします。

きっと良いパフォーマーほどそれがないのかなと思います。今日も別の取材で(森崎)ウィンさんとか安蘭けいさんの話を聞いていると、おふたりはちゃんとありのままの自分を出しているんですよね。

僕は今、そういうふうになりたいなと意識を変えている最中。逆に言うと、昔はカッコつけたい自分とかセクシーな自分を一生懸命出そうとしていたな、と思います。

――表に立っているときの自分を、ご自身の目から客観的に見るとどんなふうに見えますか?

僕は周りのスタッフさんの力を借りてやっとナチュラルにいられるという感じで。何の用意もなく武器も持たず、いきなりぽんっとステージの上に立たされると、ネガティブで涙脆くて自己中。まだまだ幼稚で頼りないパフォーマーだと思っています。

――そんな自分を改善したい? それとも、そういうのも含めて自分?

欲張りかもしれないですけど、両方ですね。弱い自分を肯定しつつ、もっと頼もしい自分になりたい。そしてその両方しっかり見てくれている人たちに見せたいです。

――そんな高橋さんにとって、ありたい理想のエンターテイナー像は?

それこそジェイミーです。夢を追いかけているところが自分にすごく似ているし。引っ込み思案な僕にとって、天真爛漫で自由なジェイミーは憧れです。

ジェイミーの存在に勇気をもらっているし、なりたいなって思う。ジェイミーのようなカリスマ性を、俳優ではない、素の自分としてステージに立っているときにも出せるようになりたいです。