2024年11月3日(日) 場所:東京都港区南青山・複合文化施設「スパイラル」

日本財団「海と灯台プロジェクト」を運営する一般社団法人 海洋文化創造フォーラムは、2024年11月3日(日)、複合文化施設「スパイラル」(東京都港区)にて「海と灯台サミット2024」を開催しました。
第一部はシンポジウムで、「灯台で地域活性化」「灯台で〇〇やってみた」「海と灯台学」をテーマに、灯台を活用した地域創生に取り組む「仕掛人」、灯台でユニークな取り組みを実現させた「実践者」、学識経験者による事例発表や提言など活発な議論が交わされ、来場者202名に加えYouTubeライブ配信を290名が視聴。第二部は灯台を取材した直木賞作家4人が各地の灯台に刻まれた海の記憶を語り合うトークショー、第三部は灯台利活用に関心を持つ自治体・企業担当者などが集う情報交換会を実施しました。日本財団 海野光行常務理事は、参加者や視聴者に向けて「これからも皆さんとともに、灯台の光を未来へとつなげていけるよう、プロジェクトを進めていきたいと思います」と宣言しました。尚、シンポジウムはYouTubeにてアーカイブをご覧いただけます。
https://www.youtube.com/live/vQMVqWv-ig4
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環です。
特設ページ:https://toudai.uminohi.jp/toudai-week2024/

「海と灯台サミット2024」第一部シンポジウム 登壇者・MC


灯台利活用事例発表「灯台で地域活性化」現地でカフェ運営する高校生も
全国各地で灯台を利活用した地域活性化に取り組む5団体の代表者や中心メンバーが登壇(オンライン中継含む)し、それぞれの地域が持つ独自の資源と灯台を結びつけ、地域の魅力を引き出した事例を発表しました。

事例発表の様子



野島埼灯台利活用プロジェクト委員会(千葉県)の糟谷直弘さんは、野島埼灯台で実施している「灯台&星空観察会」を紹介。灯台がない時代、星を目印に航海していた「スターナビゲーション」の歴史に触れ、単なる星空観察ではなく、星空を見ながら灯台の役割を再認識する体験を提供していることについて触れ、「星空と灯台をかけあわせることで価値が向上する」と強調しました。「灯台&星空観察会」の参加者からは「星と灯台が一度に楽しめて良かった」「ほかの灯台に行ってみようかな」との声が寄せられているとのことです。
※「灯台&星空観察会」詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002943.000077920.html

積丹町地域活性化協議会(北海道)の小山彩由里さんは、まちの地理や歴史を学ぶための教材として灯台を活用し、普段は立ち入りできない夜の灯台を訪ねるナイトツアーをはじめ、灯台普及用のパンフレット作成など知的好奇心を満たすさまざまなコンテンツを提供している「神威岬灯台カレッジプロジェクト」の取り組みを発表。灯台を観光資源として活用するだけでなく、教育的な価値を持たせることによって地域と海に関する学びが得られると共に、過疎化に悩む地域課題の解決につながる可能性があることを説明しました。
※神威岬灯台プレミアムナイトツアー詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002945.000077920.html



秋田県男鹿市でこの日開催されていたイベント「石焼フェス」から「なまはげ」と共に中継で参加した入道埼灯台利活用事業委員会(秋田県)の田中勝さんは、秋田県男鹿市の郷土料理「石焼料理」で使われる石は、灯台の地盤である7000万年前の岩石だったという興味深い話題を提供。灯台と食をかけ合わせて地域の地質的な成り立ちを伝えることで、「灯台」と「食」双方に新たな価値を生み出せる可能性を示唆しました。
※石焼フェス詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002963.000077920.html

灯台からのメッセージ運営委員会(長崎県)の中尾和美さん・久保清悟さんは、歴史的・文化的背景からあまり交流がなかった生月島(いきつきしま)の2つの集落が、島の南北にある2つの灯台を活用したイベントによってつながりを強め、地域の一体感が生まれた事例などを紹介。海と陸をつなぐ「結節点」である灯台には、地域の人々・歴史・文化をつなぐ結節点としてのチカラが秘められており、地域資源として活用すれば地域課題の解決につながると指摘しました。
※ツナガル灯台マルシェ詳細:https://toudai.uminohi.jp/report/post-7246/
※灯台ナイトカフェ詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002891.000077920.html

翌日に開催される佐田岬灯台でのイベント「渚のエメラルドマルシェ」に向けて忙しく準備に取り組んでいた佐田岬灯台利活用推進コンソーシアム(愛媛県)の宇都宮圭さんと、灯台に主体的に関わる人材「燈人(あかりびと)」として活動する愛媛県立三崎高校「未咲輝ゼミ・Cafe to 燈人」の皆さんは、現地から中継で参加。灯台キャラクターの開発や灯台の官舎跡地を利用したカフェの運営など、灯台を活用した地域振興を高校生自身が進めていることを紹介。若い世代が灯台に関心を持ち、地域の未来を考えながら実際に行動に移している姿を通して、灯台は地域を担う次世代のリーダーを育む存在になり得ることを明らかにしました。
高校生カフェ詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002931.000077920.html
渚のエメラルドマルシェ詳細:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003026.000077920.html

5地域5団体の事例発表は、灯台が地域の盛り上げに大いに貢献していること、灯台が地域活性化の核となり得る存在であることを参加者に強く印象付けるものとなりました。

クロストーク「灯台で〇〇やってみた」バイきんぐ西村氏は灯台でキャンプ
自らの専門分野やアイデアで「灯台×〇〇(カケルマルマル)」にチャレンジした4組の登壇者が、「実現の場」としての灯台の可能性と自らの取り組みについて語り合いました。

テーマ2.クロストークの様子

灯台エピソードで盛り上がる石狩灯台お兄さんと西村氏

詩人・ラジオDJ・漫画家など幅広い分野で活躍している杉作J太郎さんは、灯台サミット2日前にチャレンジした「灯台ラジオ」の取り組みを紹介。「灯台が光を放って船を導くように、ラジオも孤独な人に向けて声を送り届けている面があり灯台の役割と似ている」との発想から、愛媛県の釣島灯台からのラジオ生放送を実現させたことを報告しました。灯台の光とラジオの音が海を渡って希望を届ける「エモい」コンセプトが印象的で、「いつでも誰かが使えるよう、どこかの灯台にサテライトスタジオを作りたい」との発言も飛び出しました。

愛知県の野間埼灯台を拠点に、灯台の利活用と地域おこしに取り組む「現代版 灯台守」として活動する仙敷裕也さんと佐々木美佳さんは、灯台を活用したウエディングフォトの撮影や灯台前でのキッチンカー営業、灯台展望デッキへの案内、イベント企画など、これまでの取り組みを紹介。さまざまな活動を通して灯台と地域の人々を結びつける、新たな「灯台守」としての道を切り開いている姿は、他の登壇者からも関心を集めていました。

お笑いコンビ「バイきんぐ」の西村瑞樹さんは、テレビ番組「西村キャンプ場」の企画で百貫島灯台と野間埼灯台でキャンプをした時のエピソードをユーモアたっぷりにトーク。「実は泊まっていない」としながらも、灯台キャンプの魅力に取りつかれたことを明かし、デイキャンプやアウトドアを通じて灯台がより親しみやすい存在になる可能性を指摘しました。「たき火の灯りと灯台の灯りは相性がいいと思うので、今度は泊まりで灯台キャンプに再チャレンジしたい」とも話していました。

自治体職員ながら、北海道の石狩灯台を模したインパクト抜群の姿で灯台一般公開のイベントなどに「降臨」している「石狩灯台お兄さん」は、自身の活動について「石狩灯台125周年記念イベントに地元の皆さんが協力してくださったので、何か恩返ししたいと思って(顔を)塗ってしまった」と説明。いつも「出待ち」をしてくれる熱烈なファン(小学2年生の女の子)からもらった似顔絵とファンレターを紹介し、今まで灯台に関心がなかった人でも「石狩灯台お兄さんの活動をきっかけに、灯台に興味を持ってくれる」とも話し、灯台が地域のアイコンとして存在感を増し、地域全体に笑顔を増やしていることを強調しました。

海と灯台プロジェクトの今後に向けて:日本財団 海野光行常務理事
シンポジウムの最後には、長年にわたり「海と灯台」に関する取り組みを推進する日本財団 海野光行常務理事が登壇。各登壇者の発表を振り返り「本日のシンポジウムを通じて、灯台利活用の新たな可能性とその価値がどれほど多様に広がるかを改めて実感しました。そして、皆さんの活動を線にしてつないでいく必要があるとも感じました」とコメント。続けて、「灯台に訪れることだけを目的にするとマニアックになりがちですが、『旅をする』ということを入り口に、人それぞれの興味や関心と灯台を掛け合わせると、灯台のある場所に行ってみよう、という気持ちになるかもしれません」と語りました。

日本財団 海野光行常務理事

また、「灯台×旅×〇〇」のバリエーションを示したマインドマップを紹介し、「絶景、癒やし、歴史、写真、星空、夕陽など、灯台と掛け合わせて考えられる旅のプランはいろいろと考えられそうです。地域の食文化を楽しむガストロノミーツーリズムやアニメやマンガの舞台を巡る聖地巡礼を入り口にしてもおもしろそうです。灯台とさまざまな興味や関心を掛け合わせて旅のプランを考えることができたら、もっと多くの人が灯台に関心を持ってくれると思いました」と指摘し、灯台を「旅」と組み合わせることを提言しました。さらに、「海と灯台プロジェクト」の今後の取り組みとして、「『旅と灯台』の需要を調査研究したい」とも言及。「地域の海の魅力と掛け合わせて、各地の灯台を巡ってもらう人が増えて欲しいと願っています」と結びました。

トークショー「灯台の物語」直木賞作家が新たな灯台をデザイン!? 





第ニ部は、灯台を取材した直木賞作家4人が各地の灯台に刻まれた海の記憶を語り合うトークショー形式で実施。灯台を建設するために私財を投じた人がいたというエピソードや、灯台守とその家族の安全のために地元の住民が手掘りでトンネルを掘ったという歴史など、灯台に刻まれた興味深い事実が次々に飛び出しました。

永井紗耶子さんは、御前崎沖で座礁した薩摩の船を地元の村役人と村人が救助し、そのお礼として門外不出とされていたさつま芋の種芋と栽培方法が御前崎に伝授されたことが、現在も名物となっている「遠州の干し芋」のルーツであることを紹介しました。ここでステージに、御前崎周辺の干し芋と、そのきっかけとなった鹿児島産の干し芋が登場。作家の皆さんに試食していただき、どちらが御前崎周辺の干し芋か当てていただきました。



門井慶喜さんは「Aは歯ごたえがあり、繊維がはっきり分かる。Bはふんわりした食感」と違いを解説。川越宗一さんは「両親が鹿児島出身なのでさつま芋には詳しいつもりだが、全然分からない。どっちもおいしい」と迷われていたご様子。結果、門井さんと澤田瞳子さんが御前崎周辺産の干し芋を見事に的中させました。ナビゲーターの海野常務からは「海と食を結び付ける人は多いので、海×灯台×食で地域を深掘りすると(作品の)ネタになるのでは」とのコメントがありました。

続いて司会者が投げかけた「灯台を題材に物語を書くなら、どんなタイトルにしますか」との問いに、門井さんは「七つの海を照らす」、川越さんは「書いてみないと決められません」、澤田さんは「ひかりのみち」、永井さんは「きっさこ」と回答。門井さんは「日本を取り囲む『七つの海』から灯台を一つずつピックアップして書くことで、灯台は皆同じように見えるが、それぞれの灯台が果たした役割や歴史の違いを描けるのでは。海から灯台を照らしてみたい」と話しました。
川越さんは「一つの灯台にも、灯台が立つ以前から現代までさまざまなエピソードがあり、人間ドラマがある。選びきれないほどの魅力がそれぞれの灯台にあり、一つの灯台だけでも書けることがたくさんあるので、今はそれに圧倒されている」とし、文学の題材としての灯台の可能性を強調しました。
澤田さんは「大瀬埼灯台がある長崎県五島列島の福江島は、古くは遣唐使が出港し、太平洋戦争時は南方に出征する兵士が旅立った『日本最後の地』。灯台はいろいろな人を迎え、見送ってきた。灯台が持つ昔から今までのさまざまな「記憶」を縦軸に、現代の灯台のあり方まで描く小説を書いてみたい」と構想を披露しました。
禅に由来する「きっさこ(喫茶去)」をタイトルに選んだ永井さんは「明治時代、徳川慶喜を慕って駿府に移り住んだ旧幕臣や職を失った武士・川越人足たちが茶畑事業に取り組み、そのお茶を海外に輸出するために清水灯台が建てられたという歴史がある。清水灯台を介して、幕臣たちのその後や、外国人商人の目から見た静岡の街など、幕末から明治にかけてのさまざまな出来事が描けたら」と話しました。

トークショーの最後には、「自由に灯台をデザインすることができたら」とのテーマで、作家の皆さんに絵を描いていただきました。「外から見ると一見普通の灯台だが、地下には巨大な空間がある灯台」を描いた門井さん。「(多くの)灯台は不便な場所にあるので、あえてそういう場所に公共的なスペースを作り、何に使うかはこれから(考えたい)」と解説してくださいました。人工衛星のように地球の周囲を回る謎の光を描いた川越さんは「遠い宇宙から帰ってきた宇宙船を『お帰りなさい』と迎える光を放つ、宇宙の灯台があればいいなと思いました」と説明しました。



澤田さんは、かつては神社仏閣が船からの目印になっていたという歴史を踏まえ、「お寺の塔のような灯台」を提案。永井さんは、「灯台がキャラクター化されているのなら、(逆に)キャラクターを灯台にしてみたら」と、目から光を放つ「ゆるキャラ灯台」を描いてくださいました。
その他さまざまな視点から「海と灯台」について語り合いました



3人の学識経験者が、「なぜそこに灯台が立っているのか」を「世界とのつながり」「日本とのつながり」「地域社会とのつながり」という3つの視点から紐解く「海と灯台学」の発表。灯台の背後にある歴史や自然、地域社会とのつながりを深く理解すること、つまり「灯台がそこにある意味」を問い続けることが、灯台の本質的な価値を紐解くきっかけになると指摘しました。




日本財団 笹川陽平会長はビデオメッセージで、アイスランドの灯台活用事例を紹介。キャンプやオーロラ鑑賞ができる場所として整備されていることを説明し、「灯台は日本にとっても重要な海洋資産。灯台をどのように保存し、利活用していくかが大変重要です。皆さまの活発な意見交換を期待しています」と語りかけました。



シンポジウム終了後、登壇者と全国各地から集まった「海と灯台のまち」自治体担当者や灯台利活用に取り組む団体の担当者、灯台に興味関心を持つ企業担当者などによる情報交換会を実施。参加者は、灯台利活用に関する意見交換や、お互いのまちでの取り組み・課題に関する情報交換などを活発に行いました。





シンポジウム会場へ続く階段と通路を活用したギャラリー部分では、灯台の魅力を歴史的価値からエンターテインメントまでさまざまな視点で紹介する企画展「海と灯台展」を開催。太古から大航海時代、そして現代までの人と海と灯台の関わりを紐解くパネル展示や、人気作家の紀行集「灯台を読む」と連動した写真展示などを通して、灯台の奥深い魅力を発信しました。来場者からは「大きさに魅せられて灯台を好きになった。展示を見て、全国を回ったような気分になれました」との感想をいただきました。

参加者の声
「とても興味深かったです。訪れると少し寂しくポツンと立っていた灯台が、少しずつにぎわいと町の発展につながっているのをうれしく思っています」
「こんなにも灯台が注目され、地域活性化に活用されていることを今回初めて知りました。学びの多い時間でした」
「灯台の活用や歴史・文化などさまざまな視点で灯台を考えることができたため、いっそう灯台に興味が湧きました。地元の灯台利活用にも活かしたいと思います」

<イベント概要>


<団体概要>
団体名称:一般社団法人海洋文化創造フォーラム
URL:https://toudai.uminohi.jp/






日本財団「海と灯台プロジェクト」
人と海は、時間的にも空間的な意味においても「灯台」を境に関わってきました。航路標識として、従来の船舶交通の安全を担うという重要な役割から広がりつつある灯台。その存在意義について考え、灯台を中心に地域の海の記憶を掘り起こし、地域と地域、異分野と異業種、日本と世界をつなぎ、新たな海洋体験を創造していくプロジェクトです。海と灯台プロジェクトは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環です。
https://toudai.uminohi.jp/






日本財団「海と日本プロジェクト」
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。
https://uminohi.jp/
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