特定非営利活動法人#YourChoiceProject、全国の中学生~大学生の保護者約1800人に対し、子どもの進学についてのアンケート調査を実施
概要・サマリー
地方女子学生の進学支援を行うNPO法人ハッシュタグYourChoiceProjectと、株式会社ベネッセコーポレーションは、全国の中学生~大学生の保護者を対象として、保護者の進学期待に、子どもの性別によってどのような違いが存在するのかを明らかにする調査を行った。
【調査概要】
調査対象:未就学児~大学生までの子どもをもつ保護者
調査期間:2024年08月17日(土) ~ 2024年08月26日(月)
調査主体:株式会社ベネッセコーポレーションとNPO法人ハッシュタグYourChoiceProject による共同調査
調査方法:インターネットによる任意回答
有効回答数:1867人(女性1526人、男性323人、その他18人)
【調査結果サマリー】
・女子より男子、地方より首都圏の方が、保護者に「4年制大学への進学」を期待されている
・女性より男性の方が「学歴が高いと結婚に有利」と考えられている
・女子より男子の方が、保護者に「高い年収」を期待されている
・男子より女子の方が、保護者に「地元での大学進学」を望まれている
・男子より女子、首都圏より地方の方が、保護者に「資格の必要な職業につくこと」を望まれている
※なお、本調査では、首都圏を一都三県とし、地方をそれ以外の都道府県としている。
大学進学への期待の男女差
「お子さまに4年制大学進学を望みますか。」という設問に関して、女子より男子、地方より首都圏の方が保護者の方から4年制大学に進学することを強く望まれていることが分かった。
(第一子・第二子計)単一回答/n=3095
#YourChoiceProjectとしての考察
上記のような進学期待の違いが生じる一因として、保護者が考える「学歴がもたらすメリット」が、女子よりも男子でより大きく想定されている可能性や、保護者が「将来子どもに求める年収」が女子よりも男子においてより高く期待されている可能性が考えられる。
学歴と結婚に関するステレオタイプ
「男性で学歴が高いことは、結婚に有利になると思いますか?」「女性で学歴が高いことは、結婚に有利になると思いますか?」という2つの設問に対する回答を比較したところ、男性の方が、学歴が高いことが結婚に有利になるとより強く思われていることが分かった。
単一回答/n=1867
また、41.9%の保護者については、「男性で学歴が高いことは、結婚に有利になると思うか?」よりも、「女性で学歴が高いことは、結婚に有利になると思うか?」に対する同意の程度が低かった。
#YourChoiceProjectとしての考察
このような結果となった理由として、一般に「高学歴女性は結婚できない」というステレオタイプが共有されている背景や、保護者自身が子どもの結婚相手として、「男性であれば学歴が高くあって欲しいが、女性であれば必要ない」と考えていることなどが挙げられる。
学歴と年収に関するステレオタイプ
「お子さまには将来、どのくらいの年収を稼い でほしいと思いますか。40歳頃をイメージしてお答えください。」という設問の回答について、男子と女子では保護者に期待される年収のレベルが異なることがわかった。平均して男子は772万円ほど、女子は634万円ほどの年収がそれぞれ期待されていた。(概算)
(第一子・第二子計)単一回答/n=3124
#YourChoiceProjectとしての考察
「男性が仕事で稼ぎ、女性が子どもを産み家を守る」という性別役割分業の考えが色濃く残っていることが、この差を生んだと考えられる。実際、内閣府男女共同参画局が発表した「令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果」(注1)によると、「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」という項目に、男性のうち50.3%、女性のうち47.1%が「そう思う」または「どちらかというとそう思う」と回答した。「家事、育児は女性がするべきだ」という項目には、男性のうち29.5%、女性のうち22.9%が「そう思う」または「どちらかというとそう思う」と回答した。
このステレオタイプに縛られることで、女性はもちろんだが、男性の中にも「稼げる仕事につかなければならない」と、自由な進路選択を阻まれる人がいるだろう。
地元志向
「お子さまに、大学進学時に地元(親元)に残ってほしいと思いますか?」という設問に関して、男子よりも女子の方が、保護者から大学進学時に地元(親元)に残ることをより望まれていることがわかった。
(第一子・第二子計)単一回答/n=3108
#YourChoiceProjectとしての考察
地方よりも首都圏の方が地元(親元)での大学進学をより望まれているという結果が出たが、その背景には、首都圏と地方の間で大学の選択肢の数に大きな差があることが推測される。実際、日本にある大学の25%が東京都内に集中しており、東京都と京都府以外では各道府県の大学入学定員はその県の18才人口よりも少なく、多くの県では50%未満となっている(注2)。そのため親元に残ることを首都圏ほど強く望まれないが、地方学生にとって地元外進学という選択肢の有無は高校卒業後のキャリアに大きく影響するだろう。
資格取得傾向
「お子さまに、資格が必要な職業についてほしいと思いますか?」という質問に関しては、男子より女子、首都圏より地方の方が、資格が必要な職業につくことを保護者から強く望まれていることが分かった。
(第一子・第二子計)単一回答/n=3121
#YourChoiceProjectとしての考察
男子より女子の方が資格取得を望まれるのは、妊娠・出産等のライフイベントの際の復職を考慮した結果だと考えられる。だが、働き方が多様化する中で、本当に資格取得が復職のしやすさに直結するのか、他にも選択肢がないのかは検討の余地があるだろう。医療従事者など資格があってもキャリアにブランクのある人は採用されづらいという現状(注3)もあれば、逆にIT人材などは特別な資格がなくとも復職やリモートワークなどの柔軟な働き方がしやすいといった現状(注4)もある。
また、特に地方においてより資格取得が望まれているのは、地方での職業選択肢が一次産業や医療・福祉、公務員などの資格の必要なものに偏っている(注5)といった職業ロールモデルの多様性の差の影響もあるのではないだろうか。
終わりに
今回の調査結果によって、保護者の期待には性別や地域による違いが見られることが明らかになった。男子は女子よりも「4年制大学進学」や「高収入」が期待される一方、女子は「地元での大学進学」や「資格の必要な職業」が望まれる傾向があり、また、地方では首都圏よりも資格職志向が強いことが示唆された。
私たちは第2回調査も実施しており、第1回調査では明らかにならなかったことについて、後日、第二報としてプレスリリースを公開する予定である。地元志向の理由や、世帯年収との関わり、経済的な側面などについて公開するため、第二報にも着目していただきたい。
(注)
1 令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究 | 内閣府男女共同参画局 https://www.gender.go.jp/research/kenkyu/seibetsu_r03.html
2 資料4-1 魅力ある地方大学の実現へ向けて(仮称)(素案)参考資料集 https://www.mext.go.jp/content/000141270.pdf
3 医師はブランクがあっても復職できる?立ちはだかる問題や復職のコツを解説 https://ishi-job.jp/blog/useful/blank/
4 エンジニア転職市場の最新動向【2023年版】IT業界をはじめ幅広い分野で活発な採用が続く https://www.r-agent.com/guide/article3384/
5 資料シリーズNo.151「地域における雇用機会と就業行動」 https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2015/151.html
今回の調査では、子どもに関する設問は、第一子・第二子それぞれについて聞いた。一人っ子の場合、「第二子該当なし」を選択してもらったが、選択ミス等の関係で合計数値にブレが生じている場合がある。
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