実演芸術・芸能の担い手が安心して働ける環境整備に向けて
エンターテインメント業界のセーフティネットの課題
エンターテインメント業界は、2020年からのコロナ禍で、最も甚大な被害を受けた業界の一つである。
全国で膨大な数の公演・イベント等が中止を余儀なくされたが、これにより仕事を失った多くの芸術家、実演家、スタッフは、雇用されていないために労災保険や失業手当の適用を受けられないことが浮き彫りになった。働く人のための重要な社会保障(セーフティネット)が、エンタメ業界従事者には十分に機能していなかったことが、アンケート調査でも明らかになっている。

出典:2023年 文化芸術推進フォーラム・日本芸術文化振興会アンケート調査結果(n=20,273)
一般財団法人日本実演芸術福祉財団の創設
こうした状況の改善に向けて、社会保障基盤が脆弱な芸術家、実演家、スタッフ等の就労環境整備に業界を挙げて取り組むべく、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会を含む4団体が発起人となり、創設賛同10団体とともに、「一般財団法人日本実演芸術福祉財団」を2025年7月に創設した。
実演芸術分野の事業者・興行主(発注者側)と、実演家・スタッフ(受注者側)の団体とがタッグを組み、実演芸術分野に携わる人々の福祉に総合的に取り組む、業界初の団体である。
https://jpawf.or.jp/

コロナ禍以降も、人材不足の深刻化、働き方改革やハラスメント対策の問題、多様な実演芸術の創造・継承のサイクルの危機など、業界が抱える問題は一層複雑に絡み合っている。
本財団は、業界全体で実演家・スタッフを支える互助プラットフォームとして、実演芸術活動を「仕事」として、安心して安全に続けていくための社会保障の基盤をつくることを目指し、様々な取組を行っていく。
画期的な仕組みで、12月15日から労災保険特別加入の受付を開始
日本実演芸術福祉財団の取組の第一歩として、財団を母体として「(一財)日本実演芸術福祉財団 労災保険センター」を設置し、「芸能関係作業従事者」区分の労災保険特別加入業務を2025年10月より開始した。財団の協同会員(所属・加盟している実演家・スタッフ等の労災保険加入手続きを支援する団体)を経由した保険加入を先行して受付していたが、2025年12月15日より、所属・加盟団体のある・なしに関わらず、広く個人事業者の実演家、スタッフ、制作者等を対象とした、「個人」での保険加入申込み受付を開始する。
「個人」で労災保険特別加入するに当たっては、財団の会員になる必要はない。対象職種や保険給付内容、料金シミュレーションなど、労災保険特別加入をご希望の方は、労災保険センターへ問い合わせください。
(一財)日本実演芸術福祉財団 労災保険センター https://performingarts-rousai.org/


(一財)日本実演芸術福祉財団 労災保険センターでは、一般財団法人日本実演芸術福祉財団の発起人、創設賛同団体、会員からの会費(支援)を、労災保険センターの運営費に充当することで、労災保険特別加入にかかる加入者本人の負担額の大幅削減を実現した。手数料は、業界最安クラスである。
財団の発起人、創設賛同団体、会員は、実演芸術分野の事業者・興行主の団体、実演家・スタッフ等の職能団体、劇団・バレエ団等の公演創造団体など、多様な団体・個人で構成されており、これらの会費(支援)によって労災保険特別加入を促進するという、まさに業界全体で個人の活動を支える仕組みをつくりだしている。
この画期的な仕組みによって、これまで金銭的な理由で保険加入を踏みとどまっていた実演家・スタッフ等の担い手たちの労災保険特別加入を促進し、万が一に備えながら、安心して仕事を続けていくことを実現していく。

労災保険特別加入(芸能関係作業従事者区分)の加入状況、課題
「労災保険」は、仕事や通勤(移動)が原因でケガをした場合、病気にかかった場合、亡くなられた場合などに、本人や家族を守るために給付が行われる国の保険制度。「雇用」されている方々は、雇用形態を問わず事業主に加入義務があり、全員が保険対象者として守られている。
「雇用」ではない形で活動する実演家・スタッフ・芸術家等は「個人事業者」となり、労災保険における労働者には該当しないため、保険適用が受けられなかった。
ただし、労災保険は、職業ごとに「特別加入」制度があり、建設業の一人親方、農業者などに加えて、2021年4月から「芸能関係作業従事者」も特別加入の対象となった。
しかし、なかなか認知が広がらないこと、仕事が不定期であるために保険加入に踏み切れない人、また保険料だけでなく特別加入業務を行う団体の運営にかかる経費(入会金・手数料等)の負担もあるため、なかなか労災保険特別加入が進まない状況があった。
公益社団法人日本芸能実演家団体協議会[芸団協]の取組
芸団協では、2022年から「芸術家のための社会保障等に関する研究」を継続し、文化芸術推進フォーラムほか関係団体と協力しながら、芸術家等の活動実態やニーズ、課題、諸外国における芸術家のための社会保障制度の事例などについての調査・研究と、日本におけるセーフティネット実現に向けた検討を続けてきた。
その結論として、アンケート結果から見える実演家・スタッフ等の声もふまえて、立場を超えて業界関係団体が団結し、資金を出し合い、一般財団法人日本実演芸術福祉財団を設立。連携して労災保険特別加入の周知を広げ、個人負担を軽減し、労災保険加入を促進することで、万が一に備えて活動を続けられるような仕組みを作り上げた。

また、芸団協として、2025年12月12日(金)に公開シンポジウム「芸術家のための社会保障シンポジウム―今、文化芸術の担い手が求めるセーフティネットとは」を日比谷三井カンファレンスで開催。芸術家等の社会福祉やキャリア形成を支援する国内外の取組から、日本における芸術家等のセーフティネットのあるべき姿を考える。
多くの方々にエンターテインメント業界の現状と、新たな取組について理解いただく機会になればと願う。
【本リリースに関するお問い合わせ】
一般財団法人日本実演芸術福祉財団
〒163-1466 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー11階
TEL:03-6258-2800(平日10時~18時)
https://jpawf.or.jp/

公益社団法人日本芸能実演家団体協議会[芸団協]〒163-1466 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー11階
https://geidankyo.or.jp/
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ







