2017年に起きた東名あおり運転死傷事故から1年が経過し、危険運転致死罪などに問われた容疑者に懲役18年という判決が下った。ご遺族の悲しみは計り知れないが、この事故をきっかけに「あおり運転」という言葉が2018年流行語大賞にノミネートされるほど、世の中に知れ渡る結果となった。このあおり運転死傷事故と同様の悲劇を繰り返さないため、抑止力としてドライブレコーダーを求める傾向が高まっていることが市場データからも読み取ることができる。

まず、製造メーカー側の出荷台数を見てみよう。ドライブレコーダーを製造するメーカーや、撮影動画から事故分析を行う企業からなる一般社団法人ドライブレコーダー協議会(東京・品川)によると、18年7月~9月のドライブレコーダーの国内出荷実績は約86万台となっており、前年同期の約43万台から2倍に拡大した。

この出荷実績に比例するように、ドライブレコーダーの搭載率も増加した。ソニー損保が18年10月に実施した「全国カーライフ調査」では、18年調査時のドライブレコーダーの装着率は31.7%となっており、17年調査時の15.3%より約2倍まで増えている。「今後ドライブレコーダーを付けたいと思う」と回答した54.1%を含めれば、約86%の人がドライブレコーダーを搭載する意向があると判断できる。

ここで家電量販店・ECショップのPOSデータを集計した「BCNランキング」の日次集計データを使い、18年1月1日~12月24日までの累計販売台数を「2018年(暫定)ドライブレコーダー販売台数ランキング」としてみると、1位と2位はコムテック製の「ZDR-012」「ZDR-015」がそれぞれランクイン。各製品の平均単価は1~2万円弱となっているが、リアカメラが付属しているZDR-015は2万2000円となっている。

さらにリアカメラを付属した、後方撮影が可能なドライブレコーダーに絞った販売台数ランキングをみると、ZDR-015は73.3%と圧倒的なシェアで1位。その後は18年10月にJVCケンウッドが発売した「DRV-MR740」、セルスター工業が6月に発売した「CSD-790FHG」、ユピテルが10月に発売した「DRY-TW9100d」と、従来からのドライブレコーダーメーカーの新製品が続く。

リアカメラ付属のドライブレコーダー市場はようやく各社からラインナップが出揃い、成長基調に乗ったと言える。現にリアカメラ付属ドライブレコーダーの販売構成比は18年1月の3.7%から、11月では29.8%と、1年足らずで8倍も拡大している。なお、前後左右全方位の撮影が可能な360度撮影対応ドライブレコーダーは、同11月時点で約2%とまだ少ない。製品数も11月時点で9製品しかなく、今後のラインナップの拡大に期待したい。

後方からのあおり運転対策だけではなく、交通事故における過失割合算出や示談交渉の証拠としても活用できるドライブレコーダー。このドライブレコーダーの撮影記録を用いた保険も三井住友海上火災保険など各保険会社から提供されはじめている。「もしもの時」が発生した際に、少しでも有利な証拠を残すことのできるドライブレコーダーの市場はどこまで普及・拡大するのか。19年も注目のアイテム市場であることは間違いない。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などのPOSデータを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。