“絵本の読み聞かせをすると子どもの語彙や心が豊かになる”と耳にすると、毎晩、読み聞かせをしたくなります。でも、そんなとき子どもって飽きもせず同じ本ばかり持ってきませんか?

これでは言葉も増えず世界も広がらない気がして、心配になります。

心と頭がすくすく育つ 読み聞かせ』の著者の立石美津子が“同じ絵本を読む大切な意味”についてお話しします。

子どものお気に入りの絵本って確かにあります。

寝る前にママが「絵本読んであげるから好きな本を持ってらっしゃい~」と声をかけると毎晩毎晩、同じものを持ってきます。子どもは飽きていないようですが、ママにとっては毎日繰り返し同じ文章を読まされるのは、苦痛ですよね。

繰り返しが嫌いな大人

大人って繰り返しが基本嫌い。少なくとも筆者は嫌いです。買った本はたいてい一度読めば二度と繰り返し読み返すことはしませんし、一度見たテレビや映画をまた見に行くこともありません。

資料を作らなくてはならない、テストを受けるための復習のためなど、明確な目的がある場合を除いては一回読んだら「はい、おしまい」になることがほとんどです。皆さんはどうですか?

繰り返しが好きな子ども

これに対して子どもは…。お気に入りの絵本があると毎日のように「これ読んで」と持ってきます。更に読み終えた途端に「もう一回読んで!」とせがんできます。

これに応じるのがつい面倒で、ページをパラパラパラっと早送りしたり、凄く早口で読んだり、適当に文章を省略すると、子どもは「ちゃんと読んで!」と言い、不満そうな顔をします。

次にどんな場面が出てきて、どんな言葉が出てくるかわかっているのに真剣に聞いています。

よく観察してみると次を予測して笑ったり、怖がったり、驚いたりする準備をしているようです。そして毎晩、同じ反応をします。

反復が嫌いな大人と反復したい子どもの正反対の気持ちがぶつかり合いになり、つい大人は「またその本?昨日も読んだじゃない!今日は違う絵本にしたら?」と子どもが望まない別の本を読み聞かせたくなります。

桃太郎の省略

子どもが好む有名な昔話はたいてい繰り返しが多いです。たとえば桃太郎はこんな感じです。

桃太郎が歩いていると、犬が出てきて言いました。

「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
こうして桃太郎は犬を連れて鬼が島へと向かいました――

桃太郎が犬を連れて歩いていると猿が出てきて言いました。

「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」
こうして桃太郎は犬と猿を連れて鬼が島へと向かいました――

そこに一羽のキジが飛んできました。

「桃太郎さん、桃太郎さん一体どちらにお出かけですか」
「鬼が島に鬼退治に」
「お腰に付けたのは何ですか」
「日本一のきび団子」
「一つください。お供します」

『桃太郎』

登場する動物だけが変わるだけで文章はどのページも全く同じです。だから面倒になって「キジはさっきの犬や猿と同じことを言いました……」と読み聞かせると、子どもは「そうじゃない!ママ!ちゃんと読んで!」と怒ります。

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