イラスト:上田 耀子

夫婦とは「お互いを一生愛し続ける」関係であり、それを前提に結婚したはず。

そう思って夫に尽くしてきたある妻は、別の女性に気持ちを向ける夫からありえない言葉をかけられて、別居を決めました。

「それでも夫婦でいるべきなのか」に悩む妻には、何があったのでしょうか。

1.「一生この人を愛していく」と思っていた妻

ある女性(38歳)は、結婚して10年になる夫と二人の子どもがいて、好きな仕事を続けていける日々に特に不満を感じることはありませんでした。

同じく会社員として働く夫は、お酒が好きでよく飲み歩く点を除けば「子煩悩でDIYなども積極的にやってくれる」良きパートナーであり、夫婦としての関係にも満足していたといいます。

彼女は、実家で仕事が忙しかった父親を献身的に支える母親の姿を強く覚えており、

「結婚は一生夫を愛し、尽くしていくもの」

という意識を持っていました。

今の夫はそんな決意で結ばれた相手であり、子どものお世話とは別に夫のためにあれこれと気を配ることは、彼女にとって何の苦痛もありませんでした。

睡眠時間を削ってでも夫のお弁当は毎朝手の混んだものを作り、家事は自分のほうが多く負担し、義実家への挨拶なども欠かさず行う。彼女にとってはこれが当たり前であり、そんな自分に夫も満足してくれているだろう、と不満を言われないことに安心していました。

夫婦とは、「お互いを一生愛し続けるもの」。夫もそうであることを、彼女は疑っていなかったのです。

2.青天の霹靂だった夫の浮気

そんな夫におかしな様子が見えだしたのは、半年ほど前。

「前は、週末の夜に会社の人とか友達とよく飲みに行っていたんだけどね、誰と何処に行くのか全然話してくれなくなって。

帰りが朝になることもあって、大丈夫かなって思っていたの」

彼女は、自分の予定についてまったく話さなくなった夫について、最初は深く考えていなかったそうです。いちいち言うのが面倒になったのだろう、朝帰りしても昼には起きて家のことをやってくれるし、「こっちから尋ねても嫌がるかなと思って」あえて放置していました。

しかし、夫の朝帰りが多くなるにつれ、お金の減り方が早く「財布にいくらか入れておいて」と頼まれることが増え、そのうち平日の夜まで帰宅が遅くなり、やっと彼女は

「最近、飲みに行く回数が増えたみたいだけど、大丈夫?何かあった?」

と夫に尋ねます。

そのとき、夫は

「仕事の付き合いが増えたんだ」

とだけ返しましたが、彼女はそのときも「心配だから、もっと早く帰ってきてね」と夫の言葉をうのみにしていました。

それが嘘だとわかったのは、夫の財布からラブホテルのレシートが出てきたとき。

夫に言われるがままお金を入れようとしていた彼女は、思いがけず「浮気の証拠」を目にすることになったのです。

3.「なめられている」ことに気がついて

無造作に放り込まれていたラブホテルのレシートは、急に予定を言わなくなったことや朝帰りが増えたこと、平日まで帰りが遅くなったことなど、「ここ最近の夫の変わりようをすべて納得させるもの」でした。

それまで夫の浮気などまったく疑うことがなかった彼女にとってはまさに青天の霹靂であり、「ショックで手が震えた」と彼女はいいます。

「何食わぬ顔をして私たちと過ごしながら、隠れて別の女性とラブホテルに行っているんだ、と思ったら悲しくてたまらなくて。

その証拠が財布にあることを忘れて私に『金を入れとけ』なんて、妻としてなめられているんだなって気がついたの」

それから、彼女は夫を見る目が一気に変わりました。

普段通りの時間に「ただいま」と帰宅されても歓迎する気分にはなれず、料理も掃除もやる気が出ないまま適当になり、それまで一生懸命作っていた夫のお弁当も、「別の女とよろしくやっているのに、私は何をしているんだろう」と思うとキッチンに立つことすらバカバカしくなったそうです。

そんな妻の変化に気がついたのか、夫は最初「何かあったのか?」と心配するような態度を見せていましたが、それすら彼女は「見せかけなのだろうな」とまともに返事ができずにいました。

そんな妻に夫は早々に関心をなくし、それからは日々の挨拶も減り、気がつけば夫の帰宅はいつも遅いことが当たり前になっていました。

息が詰まりそうな雰囲気に耐えられなくなった彼女は、ある日夫に向かって

「これを見つけたの」

と以前見つけたラブホテルのレシートを差し出します。

子どもたちに見られたくないからと、夜遅くまで夫の帰宅を待って切り出した彼女でしたが、夫はテーブルに置かれたそれを見てさっと顔色を変えます。

「説明してほしい」

と彼女が言うと、夫はそれには答えず「どこにあったの?」と尋ねたそうです。

「あなたのお財布に入っていたのよ」

と彼女は答えましたが、そのとき夫はレシートに手を伸ばし、彼女があっと思ったときにはビリビリに破かれていました。

それを震える手でゴミ箱に捨てる夫を見ながら、彼女は

「ああ、本当に浮気していたんだな」

という悲しい確信をぼんやりと感じていました。