男性でも家事育児に積極的に参加し、夫婦で子育てする家庭も増えてきている現代。夫が会社員で妻が専業主婦、という家庭よりも共働き世帯が増え、“家事育児は女性がするもの”という認識はひと昔前のものになりつつあります。

しかし、共働きであっても、実際にはまだまだ女性に家事育児の負担が偏りがちで、SNSでは夫への不満の声が渦巻いているのも事実。

一体どうしたら、この家事育児を取り巻く男女の意識の差は埋まるのでしょうか?

そんな中、サラリーマンを辞め、家事育児をメインで担当している主夫ブロガーの河内瞬さんの書籍『主婦をサラリーマンにたとえたら想像以上にヤバくなった件』が発売。

河内さんはサラリーマンも経験している男性ならではの視点で、家事育児を担う“シュフ”業の大変さを漫画とともに文章でつづっているので、男性でも育児の大変さがわかりやすいと話題です。

どちらの大変さも知る河内さんだからこそ、この現状をどう感じ、どう打破していこうと考えているのか。河内さんが主夫になってみてわかった家事育児の大変さや、理想の夫婦のあり方などについて伺いました。

書籍化の感想は男女で完全にわかれましたね

――今回、ブログ『主夫の日々』の書籍化ということで、その経緯を教えてください。

「まず、主夫になって最初の1年間は、家事育児だけしていました。毎日バタバタで余裕もなかったのですが、1年もすれば慣れてきますよね。このままでいいんだろうか、って思い始めているところに、妻が専業主婦時代にブログを書いていた経験から、私にも『やってみたら』と勧めてくれたんです。

ブログを始めた当初は、もちろん誰にも見られなかったです。それでも、評価されるとか、ましてや書籍化なんて考えもせずに、思ったことをつらつらと書いているだけだったのが、気づけば反応が来るようになっていって。そうしたときに、自分は絵も描けるなと。それで、漫画も描くようになりまして。

書籍化の話は、まず『エッセイ漫画で』っていう話が最初に来ていたんです。でも、エッセイ漫画だと、『家事育児のドタバタ劇が面白い』で終わってしまうかなと。大変とも思わず、創作、空想のできごととして読まれるんじゃないかなと思ったんです。

なので、書籍化するなら文章メインがいいなと思って、コミックの話は全部断っていました。

発信を始めてから2年ちょっとくらいしたときにこのお話がきて、今年ようやくこうして書籍にしていただくことができました」

――冒頭の漫画「子どもを部下に置き換えてみたら想像以上にヤバくなった件」は会社勤めと主婦、両方経験がある身としては「すごくわかる!」と共感の嵐でした。この漫画を描くことにしたいきさつを教えてください。

「いきさつは本当になんてことはなく、『こんな漫画にしたら家事育児の大変さが少しは伝わるかも』と、ふと頭に浮かんだだけなんです」

――どういった反響がありましたか?

「それまで関わることのなかったいろいろなアカウントから、種々様々な反応をされました。良いものもあれば悪いものも……といった感じで、感想は男女で完全にわかれましたね。

普段から育児をする主婦の人たちからは、笑いながらも『わかるわかる(笑)』という共感の感想で、普段育児をしていないであろう男性からは『こんな奴いるわけないだろ(笑)』という、どちらかといえば空想を面白がるような感想でした。

この漫画に来た感想を見て私は『育児をまったく知らない男性は、本当にたくさんいるんだな……』と改めて認識しました」

夫に、主婦業の大変さに気づいてもらうには、どうしたらいい?

――現在も主夫業に従事している河内さんですが、ご夫婦の家事・育児の分担は現在どのようになっていますか?

「妻の帰宅後は、その日の仕事の疲労度にもよりますが、育児を主に担当してもらっています。昼間子供との時間が皆無というのが主な理由です。また、家事はただの肉体労働でもありますよね。仕事で疲れた身には少々きついと思いますので。

妻が育児を引き受けてくれている間に、私が家事をするという感じです。家事は育児がなければ、それほど面倒でもないですから」

――家事とセットになった子育ての大変さ、子どもを見ながらの料理、本当にハードルが高いですよね……。河内さん自身は独身時代から、料理は得意だったのでしょうか。

「独身時代はお腹が空いたときに野菜炒めを作ったり、簡単にお腹を満たすようなものを作っていたくらいですね。まあ、独身時代の料理なんて、料理とは呼べないようなものばかりです(笑)」

――ホットクックで料理の効率化を図ったそうですが、その他にも効率化を図った点はありますか?

「料理の効率化で一番大きいのは実はホットクックではなく、子どもが残さないように好きそうな料理に限定した点です。

子どもって、どちらかといえば凝った料理なんかより、わかりやすい味付けの方が好きなので。こういうことを言うと、『子どもが偏食になりそう』『子どもの健康が心配』と言われるのですが、あくまで『子どもが好きそうな料理・味付け』をしているだけであって、何も連日ファーストフードを食べているわけではありません(笑)。

あと、そんなに品数があっても子供は食べきれないので、米・味噌汁・肉や魚などのメイン料理に、余裕があればサラダを作る……という感じです。

ホットクックに関しては、たまにメイン料理をホットクックで作ることもありますが、基本的には汁物要員です。この結果、夕食の準備にかかる時間は大体長くても1時間くらいになっています。ホットクックを導入する前は2時間くらいかかっていたので、大分楽になりました。

ホットクックの何がいいって、同時並行でできることなんですよね。味噌汁をホットクックで作ると30分かかるんですが、その時間に別のことができるのが最大の強みだと思います」

――会社員と主夫、どちらも経験している河内さんにとって、主夫をしてみて初めて気づいたことも多いかと思いますが、なかなか男性全員が主夫業を経験できるものでもない現代において、サラリーマンの夫に、主婦業の大変さに気づいてもらうには、どうしたらいいのでしょうか。

「書籍の最後にも書いていますが、やはり夫婦の会話だと思っています。

まず、唐突に『主婦の大変さを理解しろ』と言われても、言われた方は『いきなり何?』となるに決まっています。これは逆でも同じですよね。働く側に『仕事のここが大変だから理解して休ませてくれ』といきなり言われても、何がどう大変なのかもわからない状態では聞き入れがたいはず。

これはどちらも聞く体制になっていないのが原因だと思うんです。そんな状態で言い合っても、残念ながら10のうち1も伝わらないですよね」

――確かに、お互いに自分の言い分を押し付け合うだけではダメですね……。

「じゃあ、どうやって聞く体制にするかというと、ここで『夫婦の会話』が重要になってくるわけです。

結局夫婦の仲が良ければ、自ずとお互いに助け合うはずなんです。でも助け合えないのは、忙しさなどで普段の会話が減っていき、お互いの勘違い→すれ違い→無理解→無関心となっていくことが原因です。

勘違いなんて、普段から会話していればいくらでも修正できます。でも、会話がなければ修正されず、それが原因ですれ違い、相手のことがわからないから無理解になり、最終的に互いに無関心になるわけです。すべては『相手のことがわからない』ところから始まるので、そこを最初に潰すべきだと思っています」