ドコモの5G関連の技術とサービスが一望できるイベント「DOCOMO Open House 2020」が開催された

NTTドコモは、今春に予定する5Gの商用サービス開始に先駆けて、NTTグループ内、および外部パートナー企業と共同で開発する5G関連の技術とサービスを公開するイベント「DOCOMO Open House 2020」を1月23日・24日に開催する。期間中は業界のトップリーダーによる基調講演も行われる。

本稿では22日のプレス向け先行公開日に取材した250を超える5GやAIに関連する展示の中から、一部見所をレポートしたい。いずれも次世代の技術やアイディアによって革新されるライフスタイルの具体が浮き彫りになる粒ぞろいの展示が揃っていた。

5Gの技術がモバイル通信のキャパシティを広げることによってもたらす主なメリットには「高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」の3点が挙げられる。これまでネットワークにつながっていなかった”モノ”やサービスが通信機能を持つことで、人々の暮らしが豊かさを増し、新たなビジネスチャンスが生まれるといわれている。その恩恵をすぐにでも受けることになりそうな“モノ”は自動車ではないだろうか。

ドコモでは自動車をよりシームレスにネットワークにつなぎ、音声通話やエンターテインメントのリッチなサービスを車内で実現するために、車載向けコンシューマeSIMの技術整備にも力を入れている。

現在ドコモはスマホ向けの主回線契約1本につき、1台のシンプルな携帯電話やセルラー機能付きApple Watchを同じ電話番号で利用できる「ワンナンバーサービス」をコンシューマ向けに提供している。同じ枠組みの中に今後eSIM機能を内蔵する自動車が加われば、ユーザーは一つの大容量パケットパックを契約すれば車載向けサービスも手軽に使えるようになる。

ドコモが2019年に打ち出した、5G対応スマホをハブに複数の周辺機器を接続して活用する「マイネットワーク構想」の取り組みが自動車にもいつ、どのような形で波及するのだろうか。ドコモでは現在、携帯通信事業者の業界団体であるGSMAの会合に参加して、コンシューマeSIMの車載サービスの標準化に向けた取り組みにも注力している。

5Gの高速・大容量データ通信の特徴が活かせるエンターテインメント系の技術として、以前から注目されているのがVRだ。本イベントにも多数のVR関連の展示が並んでいた。日中共同制作の生放送アニメ「直感×アルゴリズム」のブースでは、高品位な画質と精度の高いモーションキャプチャーの技術によるVRアニメーションの視聴体験ができた。5Gを活用して日中間をつなぐライブ配信のイベントも3月21日に予定している。

ドコモは外部パートナーとの協業による、ITネットワークの技術を活かした事業創出にも注力している。協業相手の中には国内外のスタートアップも多く含まれているが、米Tellus(テルアス)との間ではベッドに横になって休む高齢者の健康行動を、ウェアラブル端末やカメラなどユーザーが負担に感じるデバイスを使うことなく、室内にミリ波の電波を飛ばす小型端末を置いて見守るヘルスケアサービスを開発中だ。

会場に用意されたデモンストレーションでは、ベッドに横になった人物の動作だけでなく、脈拍や呼吸などの生体データをミリ波の電波を使って正確にトラッキングする技術の特徴を紹介した。

Tellusのスタッフは、ミリ波による技術は0.1mm単位の人物の動きを正確に検知できるため、精度の高い睡眠サイクルの測定や急性疾患への早急な対応など、家の中におけるヘルスケアサービスに幅広く応用できると話す。出資を受けるNTTドコモ・ベンチャーズとの協業で、国内でも来年度を目処に介護施設など法人向けのサービスとして商用化する方向で検討している。

セコム、AGC、DNA、ドコモは共同でAIを活用したバーチャル警備員サービスを試作した。展示の説明に立つスタッフによると、監視カメラを活用する遠隔警備システムと、AIアシスタントを搭載するスマートスピーカーの「足りないところを補い合うサービス」として開発が進められているという。

パネルに内蔵する光センサーで人が近づいたことを検知すると、以降バーチャル警備員の目線が人物の顔をトラッキングする。顔認証技術を組み合わせれば対象の人物に合わせて声かけの内容も選り分けて出せる。共同開発各社はバーチャル警備員を今春以降の実用化に向けて調整を進めている。5Gの通信技術を組み合わせれば、警備システムを運用するオペレーションセンターを遠隔地に置きながら精度の高いリアルタイム監視が行えるそうだ。

DOCOMO Open House 2020は事前来場登録を行えば無料入場が可能。期間中は大勢の来場者で賑わうことが予想される。(フリーライター・山本敦)