柳井貢氏

【re:START】エンタメ再始動へ向けて。

ぴあではエンターテイメント業界のキーパーソンにインタビューを連載していきます。

【re:START エンタメ再始動に向けて】キーパーソンインタビュー第3回は、株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション執行役員であり、「#オンラインライブハウス_仮」発起人の柳井貢氏に、3回にわたってお話をお聞きします。

【エンタメ】マネタイズ法と「生」である価値の追求【前編】オンラインで“キャパ”を設ける理由は?【中編】に続く最終回は「#オンラインライブハウス_仮」が提示した考え方、ポストコロナ時代の新たなライブエンタテインメントの可能性について聞きます。

(※この取材は、5/14にオンラインで行いました。)

「#オンラインライブハウス_仮」の肝はキャパ設定と“地域性”

── 運営面の課題はどういった部分でしょうか?

柳井 一番は、オンラインに入れないっていうお客さんに、どうやってきちんと案内するかっていう部分だと思うのですが、現場で一緒に動いてくれている幸山と佐々木に意見を聞いてみたいと思います。

ちなみに、今はまだ僕を含めてこの3人ですべてを回しています(笑)。実際にやってみて、ここは改善しなければ、という点に関してはどう?

幸山 プレイガイドでチケットを申し込んで、当選して購入した先に、Zoomウェビナーに登録してもらわないといけないんですね。そこへの誘導についてはまだまだ課題があると感じています。

チケット購入画面からZoomウェビナーへの登録画面へ遷移するプレイガイド側のシステム開発がまだ進んでいなくて。現状は注意書きで対応している、という感じですね。

なので、開場直後にインフォのメールで「入れない」っていう問い合わせがお客さんから来てはじめて発覚して、そこから個別対応っていうところになるので、ちょっとそこはなんとかしないといけないなと感じています。

佐々木 そうですね。当然まだ始まったばかりで手探りの部分が多いんですけど、そこは新しいことにチャレンジしているんだという希望を込めて取り組んでいきたいなと思っています。

柳井 ということで、自分たちでシステムを開発しているわけではないので、Zoomウェビナーを使っていかにサービスを提供するのかというのを、僕たちも勉強をしながら動いているという状況ですね。

── ちなみに、Zoomウェビナー機能を使用しているのはなぜですか?

柳井 絶対それがいい、ということではないのですが、現状で言うと、僕らがやろうとしていることを機能として実装していて、使い勝手の良いインフラがZoomウェビナーだったということですね。

つまり、人数を制限して、その中で相互通信をやろうと思えばできて、送信元が多元でできる、というあたりです。

もちろん音のクオリティーを上げられるに越したことはないし、変な話、日本のどこかの会社がZoomウェビナーよりもっと使い勝手が良いものを提供してくれれば、すぐに乗り換えると思います。

ただし、現状で開発が進んでいるものを見ていても、僕らの考えとは違う方向で進化しているな、という印象を持ちます。

プラットフォームの進化から見れば、煩わしいと切り捨てられるようなものが、じつはライブの演出に含まれる大切な要素になってくるというところがあるんですよね。

だって、わざわざプレイガイドさんでチケットを買って、それぞれ違うライブハウスのオペレーションを取り入れてっていうことですから、僕らは(笑)。

で、再三申し上げているとおり、「#オンラインライブハウス_仮」の肝になっているのが、「キャパ設定」なんですけど、もうひとつ、「地域性」というのを出したいんですよ。

ある程度動員力のあるアーティストであれば、各地のライブハウスとやることによって、100キャパを一週間7公演作ることもできる。

そこで、札幌のお店です、仙台のお店ですっていう設定理由が作れると、お客さんも納得してくれると思うんです。

つまり、札幌のライブハウスでは北海道の人が優先されるし、仙台のライブハウスでは東北の人が優先されますよ、と。

そうした理由と役割があることによって、自然と受け入れられると思うんです。でもこれが、アーティストの所属事務所とサービスだけでやっているワンストップモデルだと、成立しないんですよ。

単純に、1万人が見たいって言ってるんだったら無制限で見せろよっていうことになってしまう。

だから、配信プラットフォームの新しいものは欲しいんですけど、あくまでもそれは視聴環境だけの話であって、より便利なサービス自体を求めているわけではないんですよね。