Photo:小境勝巳
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銀杏BOYZの6年9ヶ月ぶりとなるフルアルバム『ねえみんな大好きだよ』が10月21日にリリースされることが決まった。本作は、オリジナルメンバー脱退後、峯田和伸1人になってから初めてのフルアルバムになるのだが、この6年9ヶ月を顧みれば、前作からここに至るまでの銀杏BOYZは休むことなくラジカルに動き続けていた。

銀杏BOYZ結成から17年間の活動の中でも、かなり濃厚な時間を過ごしていたわけだが、これらの経験や刺激が、銀杏BOYZにとって最も重要なアルバム制作にどう反映されたのだろうか。また、誰もが新型コロナウイルス感染拡大による制限や影響を強く強いられている今、峯田はどんなことを考え、銀杏BOYZの表現に反映させたのだろうか──。

ここでは、こういった今の峯田が考えていること、アルバム完成までの経緯と思い、収録楽曲についてを徹底インタビュー。アルバム収録曲数「11」にちなんで11週にわたってお届けする(毎週水曜日更新予定)。第5回の今回は8月のスマホライブでも披露された、アルバム収録曲『大人全滅』『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』について聞いた。

大人が子どもになり、子どもが大人になる時代

── 前回までに聞いた『ねえみんな大好きだよ』の冒頭のハードコア2曲(『DO YOU LIKE ME』『SKOOL PILL』)の次、3曲目に収録されているのが『大人全滅』。これは随分前から先行してミュージック・ビデオが公開されていました。

峯田 ビデオだけじゃなくて、サポートメンバーに入ってもらってから結構早い段階でライブでは演奏してたよ。この曲自体もさ、1999年に出したGOING STEADY(銀杏BOYZの前身バンド)のファーストアルバム『BOYS & GIRLS』の中の『DON’T TRUST OVER THIRTY』っていう曲のリメイクだから、原曲を知っている人は入りやすい曲だと思う。

なんかさ、昔作った曲だと照れちゃったりして歌えなくなった曲って実はたくさんあって。当初は『DON’T TRUST OVER THIRTY』もそういう曲の一つだったの。でもさ、20年以上前の自分が書いた曲だけど、改めて歌詞を読み返してみると、意外と今の気持ちに近いっつーか「2020年にピッタリだな」と思って。僕を取り巻く環境もそうだし、SNSとかのご時世もそうだし。

今の時代は子どもが大人になっていて、大人が子どもになっているような気がするんだ。インターネットだのSNSだのLINEだのでさ、裏アカ作って友だちの文句なんかナンボでも言えるのは今でしょ。あるいは、周りの人には見せられない自分の秘密の部分とかも匿名で告白することもできる。それこそ、浮気だの不倫だのみたいな不純なことなんてやりたい放題でしょ、その気になったら。

そういうことをする大人を否定するつもりはないんだけど、でも、SNSがこれだけ広まる前に比べればやっぱり大人がどんどん子ども化していっている気はするんだ。対して、子どもは情報収集とかの技術を覚える時代に育っているわけで、大人以上に大人になっているところがある。

大人が情報だの新しいツールだのに翻弄されて子どものようにオロオロしているのに対して、今の子どもは、そういうツールが事前にあって、ある意味大人よりもずっと先に行っているっていう。

「縦社会」っていうとさ、だいたい悪い意味で言われるけど、僕は必ずしも悪くは思えなくて。やっぱり「縦社会」があるからこその気持ち良さもあれば、大人に対するカウンターが出来る良さとか、情緒みたいなものが生まれたと思うの。

でも、その「縦社会」が完全になくなるのが近未来だよ。マジで大人全滅(笑)。そういう意味で、あの1999年頃に僕が作った『DON’T TRUST OVER THIRTY』がまた違う意味を持ったように思えて。もちろん、20年前の僕はもっとストレートな意味で書いたと思うんだけど、1周回って今の時代にピッタリハマる感じがしたんだよ。それで『大人全滅』っていうタイトルに変えて、アレンジも変えて、改めて今回のアルバムに入れることにしたんだ。