『砂漠でサーモン・フィッシング』を手がけたラッセ・ハルストレム監督(C)Kaori Suzuki

英国でベストセラーを記録した小説を、ユアン・マクレガー主演で映画化した『砂漠でサーモン・フィッシング』が8日(土)から日本公開される前に本作を手がけたラッセ・ハルストレム監督がインタビューに応じた。

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本作は、ポール・トーディの小説『イエメンで鮭釣りを』(邦訳:白水社刊)を映画化したヒューマンドラマ。真面目でサエない水産学者アルフレッド・ジョーンズ(マクレガー)が、イエメンの大富豪から「砂漠で鮭釣りがしたい」という奇想天外な依頼を受け、政治家や様々な人々の思惑に翻弄されながら、前代未聞のプロジェクトに挑む姿を描いている。

スウェーデンで生まれ、『ギルバート・グレイプ』や『サイダーハウス・ルール』など数々の名作を手がけてきたハルストレム監督は「まず、この脚本が面白かったんだ」と、笑顔でその始まりを振り返る。「僕はコメディに関して、自分のスタイルやトーンを持った題材をすごく見つけたいと思っていたんだ。“砂漠に川を作る”というとても変わったアイディアの中で、主人公ふたりが恋に落ち、それがとてもリアルに感じられることも良かったよ。この映画はジャンル分けすることができない。そこも気に入った点だ。僕はクロスオーバーな映画が好きなんだ」。

確かに本作では、砂漠を舞台にした壮大なプロジェクトの行方と、登場人物たちのドラマが並行して描かれている。これらの両方がしっかり描かれないと“観客を惹きつけるためだけの無謀な設定”の映画になってしまうだろう。「この映画はコメディとドラマのワイルドなミックスなんだ。そしてそれらの真ん中にあるロマンスを、ぼくは本物らしく描きたかった。だから多分チャレンジは、そういった違うトーンが“不協和音”を出さないようにすることだった。変わったストーリーをやる時はいつもそうだし、もし本物だと感じられる演技を引き出すことにこだわったら、マジカルで奇妙なことが起きることが可能になるんだ。それが僕の理論だよ」。

どんな設定であれ、俳優たちから最高の演技を引き出し、人間のリアルな感情を描くことに徹底的にこだわる。それが“ラッセ流”だ。「僕は本物だと感じられる瞬間が大好きでね。感情移入出来て、本物の人生の一部だと思える素晴らしい演技を引き出せる可能性を持ったストーリーを語るのが大好きなんだ」と語るハルストレム監督は、少し奇妙な設定の物語を、マクレガーら俳優たちの名演を引き出すことで、観客の胸に響くドラマに仕上げている。

『砂漠でサーモン・フィッシング』
12月8日(土)丸の内ピカデリー他 全国ロードショー