『フランケンウィニー』を手がけたティム・バートン監督

ティム・バートン監督の3Dアニメーション『フランケンウィニー』が15日(土)から日本公開される。1984年に製作された短編映画をなぜバートン監督は改めて“語りなおす”ことにしたのだろうか? 来日したタイミングで話を聞いた。

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本作は、科学の大好きなヴィクター少年が、事故に遭った相棒の犬スパーキーを、授業で習った“電気の実験”を応用して甦らせることから始まる大騒動を描いた作品で、基になったのは監督がシェリー・デュヴァルらを起用して1984年に製作した短編映画だ。「短編を作った頃はアニメーターをしていたから、実写で短編をつくる機会を与えられてよろこんだけど、今回は前よりも“純粋”な気持ちで作品に向き合うことを心がけたよ」。

そこでバートン監督は本作を実写ではなく、人形をひとコマずつ動かして撮影するストップモーション・アニメで描くことを選んだ。CG全盛の現在では少しずつ職人たちも減りつつある手法だが、バートン監督は以前から「この題材は実写よりもストップモーション・アニメに適していると考えていた」という。「私としてはすべての芸術形態が残ってくれればいいと思っているんだ。CGアニメも素晴らしいけど、手描きアニメもストップモーション・アニメも残ってほしい。数年前にディズニーは手描きアニメをやめると宣言したけど、その後に宣言を撤回してできた映画(『プリンセスと魔法のキス』)は本当に美しい映画だったしね」。さらに監督はこれをすべて“モノクロ”で描くことを選択した。それも単にカラー映像から“色を抜いた”モノクロではなく、モノクロ映画のライティングや画面の質感を追求した“真のモノクロ映像”だ。「撮影前に撮影監督としっかり話し合ったから、モノクロ映画のもつ影の使い方や“深み”が出せたと思う。この映画でモノクロを採用したのは、白黒で描くことで美しさやリアリティが増すと思ったからだよ」。

ちなみに本作は短編から出発しているが、決して“リメイク”ではない。30年弱の時を経て監督も成長し、私生活では子を持つ親にもなった。そのことが本作に大きな影響を与えているようだ。「この映画は短編とは異なるものだと思ってもらっていい。確かに私は子どもの頃、周囲から少し変な目で観られて孤独を感じたし、その頃の感情を映画に盛り込んではいる。でも、この映画を作ったのはより“ピュア”に物語を語りたいと思ったからだ。それに、僕の親はヴィクターの両親のように僕を育てなかった。でも僕は親として自分の子どもを支援したいと思っている。だからこの映画は子どもたちにとっては特別なメッセージになっていると思うよ」。

バートン監督がリメイクでも、リ・イマジネーションでもなく、キャリアの中で最も愛着のある物語を“語り直し”た『フランケンウィニー』。そこには、バートン監督の魅力の“根源”と“現在”がつまっているのではないだろうか。

『フランケンウィニー』
12月15日(土)全国公開