映画『LOOPER/ルーパー』の特殊メイクを手がけた辻一弘

ジョセフ・ゴードン=レヴィットとブルース・ウィリスが共演するSF大作『LOOPER/ルーパー』が12日(土)から公開されるが、本作ではオスカーに2度ノミネートされている日本人アーティストの辻一弘が特殊メイクを務めている。そこで一時帰国した辻に、本作での作業とメイクのこだわりについて聞いた。

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本作は、未来からタイムループしてきた標的を抹殺する暗殺者“ルーパー”のジョーが、ターゲットとして“30年後”の自分に出会ったことから始まるSFアクションで、辻は若きジョー役のレヴィットに特殊メイクを施し、ウィリス演じる30年後のジョーに近づける作業を行った。

特殊メイクをして、ふたりの人物の顔を似せる。言葉で書くのは簡単だが、すべてのパーツや形状を取り替えられるCGとは違い、特殊メイクは俳優の骨格や筋肉のつき方、動きに大きく左右される。辻は「顔を似ていると感じる最も大事なポイントは“プロポーション”です。目と目の間の距離や鼻の位置です。例えば顔の認識システムというものがありますけど、あれが最初に認識するのは“プロポーション”。他のパーツが似ていても目の位置が少し違うだけで“似てない”と思うんです」とした上で、「最初にこの話が来たときは、ふたりのプロポーションが違いすぎるので『それは不可能だ』と言いました」と振り返る。

そこで辻は、ライアン・ジョンソン監督やレヴィットとキャラクターについて話し合いながらテストを重ねたという。「ジョセフと話をしたのは『ブルース・ウィリスのマネをしてもおかしくなるだけなので、キャラクターとしてどういふうに創り上げていくか?』ということでした。見た目を似せることは不可能でも、同じキャラクターだと思ってもらうことはできる。例えば、ブルース・ウィリスが笑ったときのシワの入り方を見て、ジョセフのシワの位置が同じになるようにエッジを変えたりしました」。

確かにふたりの顔は似ていない。しかし、映画を観ると確かに若きジョーと30年後のジョーは“同じ人物”に見える。知らなければレヴィットに特殊メイクが施されていることに気づかない観客も多いのではないだろうか。「ホラーやアクションならいいんですけど、この映画はドラマなのでメイクが派手だと目立ってしまうし、観客がストーリーに入っていけない。そのバランスをとるのが難しかったです」。

映画のメイクは確実に役目を果たさなければならないが、観客に“メイクをしている”と意識されたら負けという複雑な存在だ。「画面に“溶けこむ”ようなメイクでないとダメ」と語る辻の技によって、観客は違和感なく30年の時を隔てた物語を楽しめるのではないだろうか。

『LOOPER/ルーパー』
1月12日(土)公開