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2019年に日本全国12の開催地で熱戦が広げられるラグビーW杯。4年に1度行われる大会には毎回、世界中から多くのファンが詰めかけ、サッカーW杯、オリンピックとともに世界3大スポーツイベントと言われている。

屈強な男同士の激突、緻密な戦略に裏付けられた駆け引きなど魅力満載のラグビー、実は“ある分野”と共通点がいくつもあることをご存知だろうか。

「ラグビー経験者にはビジネスで活躍されている方が多いんです。その裏付けとしてあるのは、1チーム15人で行う競技のため、組織論、チームビルディングのプロセスが大切になってくることです」

そう語るのは、早稲田大学や日本代表だけでなく、ニュージーランドのクラブでもプレーした今泉清氏。

現在、人の生産性を高める“パフォーマンスコンサルタント(組織開発・人材育成)”として活動し、著書『勝ちグセ。ラグビーに学んだ「最強のチーム」をつくる50の絶対法則』でも知られる同氏が、“勝てる組織”の秘訣について教えてくれた。

「目的」と「目標」を明確にする意味

今泉清氏

「チームを作る上で一番大切なのが、目的、目標を明確にすることです。両者が曖昧になると、モチベーションのエンジンがかかりにくくなります」

目的とは、それぞれが組織にいる上での存在意義。今泉氏が早大ラグビー部でコーチを務めていた頃の目的は、「ラグビーを通して世の人に勇気と感動を伝える」というものだった。

対して目標は、その目的達成を具体的に見える化したもの。早大時代では、「大学選手権優勝」が目標にあたった。

ファンに感動を与えるために、大会で勝つ、試合でいいプレーを見せる。ただ試合に勝つことが目的ではなく、自分たちが勝つことで、世の中に影響を与えることができると意識して練習に取り組むことで、激しいハード・ワークにも積極的に取り組むようになる。こうして目的達成への筋道が明確になることで、日々の練習からやる気が湧き上がってくるわけだ。

誤解されがちな、本当の「リーダーシップ」とは

目的と目標の設定とともに、“勝てる組織”の肝となるのがリーダーシップ。しかし、日本ではその真意が誤解されがちだと今泉氏は言う。

「日本全体で『うちにはいいリーダーがいない』と言われますが、それは言い訳です。リーダーシップとは、リーダーだけが発揮するものではありません。そもそも日本では昔から『和を以って貴しとなす』とやってきたように、誰か一人がチーム全体をグンと引っ張るのではなく、みんなで問題を共有して解決の道を探してきたわけです」

上司は部下に上意下達で命じるのではなく、「その人を理解し、敬意を払い、謙虚に寄り添っていく」ことが重要だ。

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「例えば、部下の行動を観察して、違和感を、感じたら、自分たち組織の存在理由である目的(理念・社是)に照らし合わせて、部下にこう聞くのです。『君の行動は、我社の理念(目的)と照らし合わせると、行動と理念が一致しているかな?』と。部下もこう聞かれると、目的(理念・社是)を頭の中に意識できるようになります」

一方、部下は上司の指示をただ待つのではなく、「気がついた人間が組織をリードしていくのが、本当のリーダーシップ」と今泉氏は説明する。つまり、上司や部下という立場にかかわらず、全員がリーダーとしての意識を持つ、他人事を自分事として捉えることができる人が多く集まる組織が“勝てる組織”の秘訣なのだ。

全員がリーダーシップを発揮するためには、日常的にコミュニケーションを活発にとり、チームワークを高めていくことが欠かせない。しかしコミュニケーションという点でも、日本では本質を理解されていないと今泉氏は指摘する。

「国語辞典で“コミュニケーション”を引くと、“伝達、意思の疎通”と出ています。でも英語の“communication”を引くと、“お互いが頭の中にあるものを共有する”ということだとわかります。つまり、伝えたい人と伝えられる人の頭の中が一緒になって、初めてコミュニケーションが成立するわけです」

組織内でお互いの考えを共有するには、上から下の一方通行ではなく、横同士の双方向性が必要になる。それができれば個々のパフォーマンスがアップし、仲間同士の相乗効果も生まれ、「生産性は8割アップする」(今泉氏)。

こうして個人、チームの力を高め、全員が目的と目標を一致させながら勝利を目指していくからこそ、世界中でファンがラグビーに魅了されていくのだ。だから、ラグビー経験者はビジネスシーンでも活躍できるわけである。

強豪に立ち向かう、日本代表の“チームワーク”に注目

そんなラグビー界最大のイベント=W杯まで、あと2年。本番が近づく中、前回大会で優勝候補・南アフリカを撃破した日本代表は11月4日(土)、「リポビタンDチャレンジカップ」で世界屈指の強豪オーストラリア代表を迎え撃つ。

純粋にラグビーの試合を楽しむもよし、チームワークやコミュニケーションの通ったプレーに目をこらしてビジネスのヒントを探るもよし。ぜひとも、会場に足を運んで満喫したい一戦だ。

リポビタンDチャレンジカップ2017〈日本代表対オーストラリア代表〉

2017年11月4日(土)
開演:14:40
会場:日産スタジアム (神奈川県)
公演などに関するお問い合わせ先: チケットナビダイヤル:0570-02-9551

 1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライターとして活動。05年夏から4年間、英国でセルティックの中村俊輔を密着取材。現在は野球を中心に執筆。『東洋経済オンライン』で「野球界に見る、凡才がトップに登り詰める方法」を連載。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)がある。