濱田めぐみ  撮影:川野結李歌 濱田めぐみ  撮影:川野結李歌

アメリカで初めて黒人音楽をラジオで紹介した伝説のDJ、デューイ・フィリップスの半生を描いて話題を呼んだミュージカル『メンフィス』が、早くも再演される。舞台は1950年代のメンフィス。人種差別が根強く残り、音楽にさえ人種の壁があった時代に、その壁を越えようとした白人の男と黒人の女。あの感動の物語が、ボン・ジョヴィのデヴィッド・ブライアンが手がけたソウルフルな音楽とともに再び立ち上がるのである。この再演では、主演を務める山本耕史が演出に加わることも決定。山本とともに物語を推進していく濱田めぐみが、再演への思いを語った。

ミュージカル『メンフィス』チケット情報

濱田が演じるのは、兄が経営するクラブで歌う黒人女性フェリシア。クラブを訪れた音楽好きの白人ヒューイ(山本)と恋に落ち、やがてDJとなった彼の応援を得ながら本格的に歌い手を目指していくという役だ。黒人と白人の恋に非難の目を向けながらもひるまず夢を追う女性を演じた舞台上の濱田は、実にパワフルだった。「フェリシアは、黒人が差別されることが当たり前だった時代に、それは当たり前じゃないと思っていたちょっと先進的な人。自分にも人としての権利があるはずだと思っている。だから、テーマ的には重く深いものを扱っているんですけど、演じていてあまり重々しくならず、毎日、『よし、明日も頑張ろう』と思えていました」。

おそらくその力強さが観客に届いたのだろう。舞台は連日のスタンディングオベーション。「お客様がもう一度観たいと思ってくださってることがひしひしと伝わってきました。ヒューイとフェリシアの関係とか、楽曲の力とか、すべてが充実した作品だったと思います」。

再演に向けては、「初演のときから、(山本)耕史さんは演出の目を持っていろいろアイデアを出してくださってましたから。耕史さんのセンスで一緒に突き進んでいけることがいちばんだと思います」と、演出に加わる山本に全幅の信頼を寄せる。その中で、「前のフェリシアをなぞることなく、その瞬間に生まれてきたことを大事にしたい」と言う濱田。「というか、自然と前のことを忘れちゃってるんですけどね(笑)。おかげで毎回真っ白な状態で入れる。我ながら役者向きの体質だなと思います」。

歌についても、「そのとき生まれた感情で歌うので、毎回同じようには歌えない」のだという。だからこそ、濱田の歌声は多くの心を捉えるのだ。「そのときの真実はその瞬間にしかない」と濱田。舞台の本質を突くその言葉が、また新たな『メンフィス』を見せてくれることを予感させる。

公演は12月2日(土)から17日(日)まで東京・新国立劇場 中劇場にて。チケットは現在発売中。また10月21日(土)~26日(木)の期間限定で、購入者から抽選で『メンフィス』制作発表が当たる【ミュージカル『メンフィス』 | S席/制作発表抽選付チケット】も発売中。

取材・文:大内弓子