(左から)阿部寛、行定勲監督

直木賞作家・井上荒野氏の同名小説を、超豪華キャストで完全映画化した『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』。妻である艶を全身全霊で愛する夫・松生春二を演じた阿部寛と、その狂おしいまでにピュアな愛を演出した行定勲監督が“真の愛”について語った。

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家族を捨て艶と駆け落ちをして大島に移住した松生は、奔放な艶の不貞に苦しみながらも、献身的な愛を捧げ続けていた。その艶が重病で余命わずかとなった時、松生は過去に艶が関係を持った男たちへ、艶への愛を確かめることをひらめく。松生から連絡が来たことを知った女たちは、夫、恋人、父が艶という謎の女と関係があったことに感づいてしまい、その存在に困惑する。本物の愛について問うセンセーショナルな愛の物語で、松生を演じた阿部は、「行定監督だから出演したいと思いました。初めてご一緒しましたが、よくぞこれだけの愛に生きる男の役を渡していただけたとありがたく思います」と本作に身を投じた理由を語る。

メガホンを握った監督は、恋愛映画の名手・行定勲。しかし、本人は「『世界の中心で、愛をさけぶ』(04)のイメージで恋愛映画を撮っていると思われがちですが(笑)、その意識はないですね。むしろ撮っていない」とした上で、「ところが、今回は明らかに恋愛映画。僕の理想の恋愛映画は狂っているというか、愛の終わりや愛を持続させること。出会いからが恋愛なわけで、好きになることが恋愛という考え方は間違っていますよ(笑)」と恋愛映画に対する持論を展開。この行定式恋愛映画を体験した阿部も、「松生は純粋な男で、10代の時の恋愛のように盲目で一直線に走っていくじゃないですか」と烈しかった愛のドラマを満足気に回想する。

“初の”恋愛映画を撮った行定監督は、「本当に人を好きになるとはどういうことかが、松生に表れています」と力説する。阿部も、「元の家族は不幸にしたけれど、愛に純粋に生きようと思い、それに賭ける人生。彼に迷いがなかったので、やりやすかった」と“真の愛”に生きる主人公に理解を示す。そして行定監督は、「これを狂っていると言ってしまうことが正しいかどうか、でしょうね(笑)。ただ僕は、これが愛の本当のあり方だと思っています」と自信を示す。“真の愛”の行方、そのあり方を映画館で見届けてほしい!

『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』

取材・文・写真:鴇田 崇