(左から)向井理、宮崎あおい

人気作家・西加奈子氏の同名ロングセラー小説を実写映画化した『きいろいゾウ』が完成した。本作に夫婦役で初共演を果たした宮崎あおいと向井理が、出会ってすぐに結婚するツマとムコという夫婦を演じた感想や廣木隆一監督と共有した心地良い時間について語った。

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売れない小説家のムコ(向井)と天真爛漫な性格のツマ(宮崎)の夫婦の絆を描く本作は、満月の夜に出会って突然結婚した男女が、傷ついて苦しみながらもお互いを見つめ合うことで真の夫婦になっていくラブストーリー。廣木監督は出会った瞬間に結婚を決めるふたりの姿に興味を抱いたそうだが、「そのシーンは、共感しにくかったです(笑)」と演じたふたりは苦労したそうだ。「どこかむずがゆかったですね」(向井)、「突然なので、怪しい? ですかね(笑)」(宮崎)と本音を漏らしながらも、「ただ、運命的な出会いなので、それは素敵だなと思いました。ふたりも感じるものがあったのでしょうね」(宮崎)と理解を示す。

廣木監督は『ヴァイブレータ』(03)、『余命1ヶ月の花嫁』(09)など、さまざまな男女の愛の類型を描く恋愛映画の名手だ。今作の主人公は夫婦だが、お互いの“秘密”を知らぬままに結婚した男女が絆を深めていく過程を丁寧に描出した。その演出について宮崎は、「言葉少なに演出を重ねてくださったので、撮影中は何が正解か自分で考えました。だから、ちょっとしたひと言で自分の気持ちが変わったりする。その繰り返しが好きでした」と説明。一方の向井も、「メルヘンは初挑戦されたジャンルだと思いますが、少しバイオレンスなカットも撮っていて、そこに廣木イズムを感じました(笑)」と廣木組と過ごした心地良い時を回想した。

2006年の原作発表以来、宮崎も向井も原作小説の大ファンだった。それぞれが思い描いていたツマとムコが、廣木監督という天才アレンジャーの手でドラマチックな映画版に仕上がったことに、ふたりとも感激を隠さない。完成した最終形を観た宮崎は、「自分が大切に想っている人に、真っ直ぐ、素直に向かい合うことかなって思いました」というメッセージを受け取ったとも。新たな魅力と息吹を得た実写版。観逃せない感動作と言えそうだ。

『きいろいゾウ』

※宮崎あおいさんの「崎」は、正しい文字が環境により表示できないため、崎を代用文字としています。正しくは“たつさき”となります

取材・文・写真:鴇田 崇