16万人が観た舞台『3150万秒と、少し』に込められた思いとは?

2013.2.8 12:30配信
『3150万秒と、少し』稽古風景 『3150万秒と、少し』稽古風景

2005年から2009年にかけて日本全国で上演を繰り返し、約16万人に鑑賞された演劇作品がある。タイトルは、『3150万秒と、少し』。4年ぶりの上演を前に、脚本・演出の藤井清美に稽古場で話を聞いた。

イギリスの映画『ニュー・イヤーズ・デイ/約束の日』に感銘を受けた藤井の「この物語を舞台にしたい」という強い思い、それがすべての始まりだった。「事故に遭って一命は取り留めたのに、生き残ったことを喜べない。そんなふたりの男子高校生を描いた作品です。特に注目したのは彼らが17歳であるという点でした。体が発達し、記憶力も想像力も豊かで、空をかけることもできそうな感覚にとらわれる一方、親や学校のルールの中にいるために実際にできることは小さい。そのギャップに苦しむ年代で、“死”に直面してしまったらどうなるんだろうと考えさせられたんです」。

『3150万秒と、少し』に登場する悠也(相葉裕樹)と直人(小澤亮太)は、高校2年生の冬のスキー旅行で、雪崩により10人の仲間を失ってしまう。自分たちだけが難を免れてしまった。その後ろめたさは、彼らの心に深く突き刺さったまま、消えることがない。犠牲者の後を追って岬から海に飛び込みたい、とまで思い詰める直人に対し、悠也は提案する。自分にはこの1年でやりたいことがいくつかある。それをリストにしてひとつずつ実行した後で、一緒に岬に行かないか。

前述した約16万人とは、主に高校生を指す。そう、この作品は、青少年に向けた公演活動に熱心な劇団・青年劇場の演目として全国各地の学校をまわり、登場人物と同世代の観客に届けられたのだ。物語のカギとなる“やりたいことリスト”には、高校生に実施したアンケートを反映したという。「始めは場内が暗くなっただけで“ヒューッ”と囃していた生徒たちも、真剣に観てくれた。きっと実際の声を集めながら作っていったことが、共感につながったんだと思います。アンケートには、“雨に濡れて歩いてみたい”とか“車の上で歌ってみたい”という回答もあって。私たちが頭では思いつかない発想ですよね」。

相葉裕樹、小澤亮太、美山加恋ら新しいキャストが演じる2013年版『3150万秒と、少し』。今回は満を持して、新たな脚本と演出が用意された。藤井は「以前とは違って、大人自身も道を見失い、子供に未来を約束することができなくなってしまった」と語る。生きるとはどういうことか。答を出すのが難しいなら、問題を直視することから始めればいい。震災を経験し、いまだ大きな喪失感を拭えない現在の観客に、この作品の放つメッセージはどう響くだろうか。

2月15日(金)から24日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、2月27日(水)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。チケット発売中。なお、来場者には、本公演全キャストのサインが印刷された特製カードをプレゼント。アフタートーク、ミニロビートークなどのイベントも多数用意されている。

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