『オズ はじまりの戦い』(C) 2012 Disney Enterprises, Inc.

『スパイダーマン』トリロジーを手がけたサム・ライミ監督と『アリス・イン・ワンダーランド』の製作者が作りあげたファンタジー大作『オズ はじまりの戦い』が公開されている。本作の主人公オズは、手品だけが取り柄の冴えない男だが、ライミ監督はオズと自身に“ある共通点”を見いだしているようだ。来日時に話を聞いた。

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奇術師オズは不思議な世界に迷い込み、魔法(マジック)を使えないにも関わらず壮大な冒険に出かけ、幾度となく窮地に陥る。そんな時に彼を救うのは、自身の中に眠っていた善なる心と、手品(マジック)のトリックを使って相手を惑わせる力だ。ライミ監督は「トリックを使って人を魅了して、自身と相手から善き心を引き出すオズは、フィルムメイカーと共通する部分がある」と言う。「実は私もパーティや子供たちのお誕生日会で手品を披露することがあるのですが、手品と映画は相手を上手にダマして魅了する、という点でとても似ています」。

そんなライミ監督は、相手に“マジック”を仕掛ける際は「説明し過ぎない」ことを最も大事にしていると語る。「ひとつひとつの段階で説明をし、見せすぎてしまうことで観客から空想する楽しみや、想像力の楽しさを奪ってしまう。だから彼らが想像力の翼を羽ばたかせる余裕を残しながら観客をいざなうことが最も大事なことです」。本作には個性豊かなキャラクターや、美しい風景、手に汗握るバトルが息つく間もなく登場するが、ファンタジーの世界を押しつけるのではなく、映像を観た人の想像力がはたらくように演出されている。「映画にとって最も重要なことは、観客がスクリーンを観てそこから空想をふくらませることです。私が目指す理想の映画はそこにありますし、現実を忘れて少しの間、世界の中に入り込んで楽しめることが映画の醍醐味だと私は思っています」。

ちなみにライミ監督の信条は、日本の映画作りから学んだ部分が大きいようだ。「私の考えはとても日本的だと思います。清水崇さんと『THE JUON 呪怨』(ライミ監督は製作総指揮を務めた)という映画を一緒につくったときにも、清水さんから『映画を作るときには見せ過ぎてはいけない。説明し過ぎてはいけない』と繰り返し言われ、私は大きな影響を受けました。だから『オズ…』は自分がこれまでに得てきた知識と経験、そして日本のみなさんから学んだことを最大限に活かしてつくった映画だと言えますね」。

スクリーンに作り手のイマジネーションが映し出され、それが観客の想像力によってさらに広がっていく。映画『オズ はじまりの戦い』は上映が終わった後も観客の中でさらに続いていく物語になっているようだ。

『オズ はじまりの戦い』
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