『ひまわりと子犬の7日間』に主演した堺雅人

2007年、宮崎県の保健所で起こった犬と人間の奇跡の実話を、長年、山田洋次監督作の共同脚本・助監督を務めた平松恵美子が映画化した感動作『ひまわりと子犬の7日間』。主人公の保健所職員・神崎彰司を演じた堺雅人が、“家宝”とまで表現した本作への想いを語った。

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保健所職員の神崎(堺)はある日、命がけでわが子を守る母犬と三匹の子犬と出会い、その命を守ることを決意する。収容期間は7日間のため、日々里親探しで現実を知り尽くす神崎は、ルール違反を犯してまで奔走する――というストーリーだ。犬と人間の絆を描くだけでなく、飼い主がいない犬が直面する現実にも対峙する脚本を手にした堺は「一番驚いたことは、殺処分を描いていることでした。光と陰で言えば、影の部分ですよね」と第一印象を明かす。「でも、映画を観ていて辛くはならなかったですね。現実から目を背けずに描いていますが、ご家族で楽しめる感動作になっていますので」と完成作を送り出す。

舞台となった宮崎ロケは一週間ほど。最初のシーンは保健所の動物管理所という施設での撮影で、そこで神崎のモデルとなった上野久治氏とも対面。そして、実際の犬たちとも会った。「一頭一頭の僕を見る目が忘れられないですね。それが僕のスタートだったので、それだけで十分な準備になりました」と現実を目の当たりにして、撮影に入った心境を吐露。ただ、シリアスなテーマを扱う一方で、前述のように“映画を観ていて辛くはならなかった”と感動物語に仕上げた平松監督のバランス感覚を堺は激賞する。「これは家族の物語でもあります。さすが、長年日本の家族を見つめ続けたチームの技ではないでしょうか」。

そして宮崎は、堺が幼少から高校を卒業するまで過ごした故郷だ。長年の夢だった宮崎弁の演技が実現するという、個人的な想いも強い一作になった。「撮影は2011年秋でしたが、前年に家畜の伝承病である口蹄疫の問題がありました。その時期に命をめぐる物語を、宮崎を舞台に紡ぐこと、宮崎の言葉に乗せて命を語ることは願ってもないことでした」と回想する。記者会見では本作のことを“家宝”と表現して感謝した堺。もうひとつ堺の言葉を借りれば、本作は“愛情の連鎖”がテーマだという。それは堺や平松監督以下、本作に携わったすべての人々、そして犬たちの想いが連なった“たまもの”だ。その想い、劇場で受け止めてみてほしい。

『ひまわりと子犬の7日間』
3月16日(土)全国ロードショー※取材・文・写真:鴇田崇