藤原竜也 (撮影:本房哲治) 藤原竜也 (撮影:本房哲治)

“演劇の申し子”として、15歳で鮮烈に舞台の世界を駆け出した藤原竜也は、その勢いのままに名だたる演劇人との出会いを重ね、数々の名舞台を生み出してきた。30歳の今、井上ひさしが最後に遺した演劇への情熱の灯をともすべく、舞台『木の上の軍隊』(4月より東京・大阪ほか全国6都市にて上演)に立ち向かっている。その藤原に現在の心境について話を訊いた。

『木の上の軍隊』チケット情報

「今、稽古している舞台『木の上の軍隊』では、僕が演じる“新兵”っていう役がすごく面白いキャラクターなんです。自分が生まれ育った沖縄の島のことをとても愛している。でも戦争によって状況が激変して、この国は、この島はどうなっていくんだろう、家族や恋人はどうなっちゃうんだろうと思い悩むんだけど、それでも笑って、自ら『僕は実はいいヤツなんですよ』なんてバカなことばっかり言いながら、必死に生きている。ちょっと自分に似てるな、と思って。僕も“根はいいヤツなんですよ”なんて自分で言うのはヘンだけど、そうじゃなくて“根が弱い”のかな? 微妙な繊細さがあるのかもしれない」

『木の上~』は2010年に他界した劇作家の井上ひさしが最後まで書こうとして取り組んでいた作品だ。戦中戦後、2年の間をガジュマルの木の上で生活した兵士ふたりの物語。書くことが叶わなかった井上の思いを、彼を知り尽くす栗山民也の演出で上演、戯曲は新鋭、蓬莱竜太が書き下ろす。出演は新兵役を藤原、上官役を山西惇、そして語る女を片平なぎさが演じる。

栗山とは舞台作りの構想についてこんな話をしたそうだ。「共通認識としては、長い上演時間を……今のところ休憩なしで観終えられると僕は見ているんですけど、お客さんが席を立つことのないよう、一緒に耐えてもらおうと。『沖縄の暑い夏も寒い夜も体験してもらって、劇場を後にしていただきたいね』とはおっしゃっていましたね。今回、張り出し舞台になっていて、ガジュマルの大きな木が装置として立っています。木を上り下りしながら芝居をするのは初めてで大変ですが、戯曲もセットも演出も良いですからね。なぎささんも素敵です。後は僕と山西さんの会話の応酬、掛け合いを完璧にするだけ、という状況かな(笑)」

公演は4月5日(金)東京・シアターコクーンを皮切りに、愛知、大阪、長崎、広島、福岡を巡演する。チケットは一部を除き発売中。

なお、藤原竜也インタビューの全文はチケットぴあ「今週のこの人」コーナーに掲載。

取材:上野紀子