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『マグノリア』『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作『ザ・マスター』に出演したホアキン・フェニックスの未公開コメントが届いた。心に深い傷を負い、さまよい続ける男を彼はどのように演じたのだろうか?

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本作の主人公は第二次世界大戦で心にキズを負った元兵士フレディ(フェニックス)。彼は“コーズ”という宗教団体に遭遇し、指導者のトッド(フィリップ・シーモア・ホフマン)と行動を共にする。自身をうまく制御できないフレディになぜか惹かれてしまったトッドと、トッドが自分を導いてくれる“マスター”なのではないかと思うフレディは、時に寄り添い、時に埋めがたい溝を感じながら旅を続ける。何かを“信じる”とは? 人は何かを信じなければ生きてはいけないのか? 映画は壮大なテーマに迫っていく。

フェニックスはまず「フレディは理解しづらい人物だ」と前置きした上で「でもそういう部分こそが彼の特別なところであり、脚本を書いたポールの素晴らしい点だと思う」と話す。確かにフレディは、自分の感情をどのように言葉や行動にしていいかわからず苦しんでいる人物として描かれている。「フレディはちょっと野性動物のようなところがある。自分が飼っている犬を見ているうちに、フレディの性格がなんとなくわかったんだよ(笑)。頭で考えるよりも、本能で動くというか。そして戦争を経験したことがトラウマとなって彼の性格に大きな影響を及ぼしている」。

そこで彼は「フレディの満たされることのない精神状態と、それが彼を唐突な行動に駆り立てるさまを表現したいと思った。できる限り自分をオープンな状態に保って、どんな方向にも行けるように心掛けた」という。「ポールが“わからない”と言うとき、それはアイデアがないことを意味しているわけではないんだ。実際はその反対で、彼にはアイデアがありすぎてどれが一番適切かわからないということなんだ。そんなとき僕らは、いろいろと現場で試しながら何が一番いい方法なのかを見極めていったんだ」。

様々なアイデアを巧みに取り込んでいくアンダーソン監督の演出と、ホフマンら名優たちの柔軟性の高い演技を得て、フェニックスはこれまで以上に心を解き放ち、役に入り込んだ。完成した作品にはリハーサルにもなかったフェニックスの“その瞬間を生きた”演技が多く残されているそうで、本作の演技は“キャリア屈指の名演”として高い評価を集めている。

『ザ・マスター』
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