ヒッチコックに変身したアンソニー・ホプキンス。写真下は劇中のホプキンス(C)2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved

“サスペンスの神”と称された名監督の知られざる真実を描いた映画『ヒッチコック』が本日から日本公開されている。本作では名優アンソニー・ホプキンスが、特殊メイクでヒッチコックに扮しているが、サーシャ・カヴァシ監督は“本人のマネ”ではないメイクを要求したという。スタッフとホプキンスはどのようにしてスクリーンに名監督を甦らせたのだろうか? 貴重な特別映像が届いた。

『ヒッチコック』メイキング映像

本作は、サスペンス界に金字塔を打ちたてた天才監督と、優れた映画編集者であり彼を支え続けた妻アルマが『サイコ』製作から成功を掴むまでの姿を描いた物語で、オスカー受賞経験もある特殊メイクのスペシャリスト、ハワード・バーガーが参加している。

このほど公開された映像では、“蹄鉄ピース”と呼ばれる大きなシリコン製の膜で首や顎、頬全体を包み込み、その上からメイクを施して、ホプキンスがふくよかなヒッチコックへと変貌する過程を紹介。『羊たちの沈黙』で観客を震え上がらせたホプキンスの青い瞳も、コンタクトレンズによって黒目へと変化しており、パッと見た限りではまるでヒッチコック本人が立っているようだ。

しかし、スタッフたちはあえて“ヒッチコックそっくり”に見せないメイクを目指したといい、ホプキンスも「私はヒッチコックになったという気はない」と断言する。彼が目指したのはヒッチコックの外見ではなくその内面と、妻アルマとの関係の中で生まれるドラマだ。ホプキンスは「ヒッチコックになりきることはできないけど、ヒッチコックの特長を大げさに強調し過ぎないよう、バランスをとるやり方を見つければいい」と、外見はあくまで“飾り”であることを強調する。

これまでのホプキンスの演技は見た目が恐ろしかったから、ルックスが良かったから観客に評価されたわけではないだろう。本作でもホプキンスは、時に高圧的で、仕事に完璧を求め、しかし孤独で窮地に立たされてしまったヒッチコックを重厚な演技で体現しており、作品を観賞するとその分厚いメイクの“奥にあるもの”に魅了されるのではないだろうか。

『ヒッチコック』
4月5日(金)より TOHOシネマズ シャンテ 他 全国ロードショー