『天使の分け前』

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輝いてきたケン・ローチ監督の新作『天使の分け前』が13日(土)から日本公開になる。本作で“今を生きる若者”を描きたいというローチ監督の最新コメントが届いた。

本作は、スコッチウィスキーの故郷スコットランドを舞台に、劣悪な環境で育ち、職もなくケンカばかり繰り返していた青年ロビーが、ウィスキーのテイスティングの才能に目覚めたことから、人生の新たな一歩を踏み出そうとする姿を描いている。

近年、日本でも若者の就職不安が問題になっているが、ローチ監督が活動する英国も若年層の就職問題は深刻だ。ローチ監督は「2011年末、イギリスにおける失業中の若年層が初めて100万人を超えた。我々は、今を生きる若い世代の多くが“空っぽの未来”に直面している問題について物語を作りたいと思ったんだ。彼らは自分たちが定職に就けないと思っている。それが人々にどんな影響を与えるのだろう?そんな彼らが、自分自身をどう見ているんだろうかと思った」と振り返る。

本作の主人公ロビーは映画の冒頭、職もなく荒れた暮らしをしている。しかし、ローチ監督は不安定な状況のみを描くことなく、主人公が仕事を通して再生し、新たな一歩を踏み出す前向きなドラマを描くことを選択した。本作にはコミカルな場面が多く、ロビーが職を通じて人々と温かな関係を築いていく過程が描かれる。ローチ監督は「彼らが穏やかでユーモアがあって、まっとうな人間だということ、実に希望のない将来に直面している若者たちが100万人もいることを知ってほしい。ここに登場するのは、その100万人の内の4人なんだ。この若者たちと知り合ったら面白いじゃないか。彼らは複雑で貴重で、本当に価値のある連中じゃないか」という。

市場や環境によって事情は様々で、単純に“仕事をすれば希望が見つかる”というのはあまりにも暴論だ。しかし、仕事に就くことで問題を少しずつ解決し、仲間を見つけ、人生を立て直していく人は多い。働くことは楽しいことばかりではない。しかし『天使の分け前』は“働くことで得られるもの”の大切さを教えてくれる作品になっている。

『天使の分け前』
4月13日(土)より銀座テアトルシネマほか全国順次公開

(C)Sixteen Films Ltd. Why Not Productions S.A.. Wild Bunch S.A.. Urania Pictures. Les Films du Fleuve. France 2 Cinema. British Film Institute MMXII