柿澤勇人  撮影:源 賀津己 柿澤勇人  撮影:源 賀津己

劇団四季を退団後、名だたる演出家の舞台に連続して出演している柿澤勇人。退団後初の舞台となった『スリル・ミー』(栗山民也演出、11年初演)は今年で再演3年めを迎え、ニーチェの超人思想に心酔する“彼”の役作りもだいぶ変わってきたと語る。自身のターニングポイントとなったのは、昨年出演した蜷川幸雄演出の『海辺のカフカ』。主人公の心象風景を表すとされる謎の少年を演じる際、蜷川から「もっと人間の汚い部分に目を向けろ!」との言葉を浴びせかけられたとか。元々、明るいキャラクターの中に繊細な表情を垣間見せる柿澤だったが、本人も「あの稽古場を経て、グッとひねくれた気がします」と充実の表情だ。今後も話題作が続く彼に“3年め”の気持ちを聞いた。

『ロミオ&ジュリエット』チケット情報

まずは5月。2年ぶりの再演となる『スウィーニー・トッド』(宮本亜門演出)に、柿澤は若い水夫アンソニー役で初参加する。ゴシック風味の劇中、ジョアンナとの初々しい恋に身を投じる役どころだ。

「アンソニーは素直な男で、いい意味でバカというか良いヤツなんですよね。僕も基本的にはそっちだと思うんですけど…。なにしろ『海辺~』の頃からひねくれた気がしてますから(笑)。なにげない言葉の裏を考えるようになったりね(笑)。だから今は、アンソニーを演じることは逆に難しいのかもしれないと感じています。あとはやっぱり(作詞作曲のスティーヴン・)ソンドハイムの楽曲! 聴いている分には素晴らしいですけど、自分で歌うとなるとものすごく難しい。今はひたすら稽古するしかない!と思っています」

その後は秋に、フランス発のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(小池修一郎演出)に参加。こちらも2年前の日本版のヒットを受けての再演で、柿澤は初めてロミオ(トリプルキャスト)を演じる。

「この作品は楽曲がポップス調の耳なじみがいいところが好きで、フランス版のCDはずっと聴いてたんですよ。だから自分がロミオ役って聞いた時はビックリしました。僕、普段はのほほんとしているので、ロミオみたいにアツい部分はあるだろうか?って。でも10代の頃を考えたら“好きになったら一直線”ってこともあったのを思い出して(笑)。まだどう演じようとかは考えてないんですが、人間くさいロミオを丁寧に表現できたら」

昨年のインタビューに比べ、明るい笑顔はそのままに、質問にじっくり考えて答える場面が多くなった。

「たくさんの素晴らしい舞台に出合えたことで、もっともっと芝居がしたい!という気持ちが強くなっているんです。映画やドラマにも少しずつ出させていただいて舞台での居方も変わってきたし、一方で舞台での経験が映像の現場での自分を強くさせているのも分かる。これからもジャンルにこだわらず、自分なりに進んでいけたら幸せだなって思いますね」

チケットぴあでは、4月20日(土)昼12時より『ロミオ&ジュリエット』のインターネット先行を受付。

取材・文 佐藤さくら