『ラストスタンド』で映画界に本格復帰したアーノルド・シュワルツェネッガー

アーノルド・シュワルツェネッガーがカリフォルニア州知事としての任期を終え、スクリーンに“完全復活”した『ラストスタンド』。超人ではない人間臭い初老の保安官役が好評だが、実はブロックバスター級超大作を2本も蹴って本作を選択していた。“完全復活”の舞台を本作に賭けた理由とは何か? ロサンゼルスでシュワルツェネッガーに話を聞いた。

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彼が扮するレイ・オーウェンズ保安官は、メキシコ国境付近の田舎町で穏やかな日々を送る初老の男。事件らしい事件がない平和な街にある日、国外逃亡を図る麻薬王と傭兵軍団が姿を現す。仲間を襲われたオーウェンズは街の人々を集め、一致団結して立ち向かう。当然、肉弾戦、銃撃戦などのアクションが満載だが、かつての肉体派アクターにブレや迷い、10年間のブランクはまるでない。「まったくなかったわけじゃないが、幸運にもシルヴェスター・スタローンが『エクスペンダブルズ2』で僕にオファーした。ウォームアップ時間がもらえたっていう感じかな(笑)。そしてこの映画だ。ジョニー・ノックスビルなどが加わってくれたことで実現したようなものだよ」。

一方、オーウェンズ保安官は普通の人間で、“アクション・ヒーロー”ではない。超人的なキャラクターが活躍するかつてのシュワルツェネッガー映画とは路線が異なるが「ハリウッド復帰にあたって、僕は正しい企画と正しいチームを選択した」と慎重に作品を吟味したことを明かす。「実は8000万〜1億ドル規模の大作映画のオファーがあったが断った。小規模予算の映画で始めたかったからね。そうすれば撮影も演出もじっくりできるので良作に仕上がる可能性が高く、俳優の演技力に依存した映画になると思ったからだよ」。じっくりと映画製作に身を投じたい。10年の間に映画熱が再燃したのだ。

「大作映画は、やたらに無駄遣いしがちだ。小規模映画なら、資金回収もずっと楽だ(笑)」とプロデュサー的コメントでジョークを飛ばす余裕も復活! 試写会などで観た人間の評判も上々だ。新しい“シュワ”伝説がスタートした。「だから、僕にとって『ラストスタンド』は正しい映画だった。今後は、ちょっとずつ規模を大きくしていこうと思っているよ」。

『ラストスタンド』
4月27日(土)全国ロードショー

取材・文:鴇田崇