『ミストー・タッカルビ』のチョルパン(鉄板)タッカルビ11000ウォン

数年前、韓流人気が陰りを見せると同時に、訪れる人が減少した東京のコリアンタウン新大久保だが、最近、ある韓国料理人気がけん引役となって再び賑わっているという。

料理の名はチーズタッカルビ。なんのことはない、15年前に韓流ブームを生んだドラマ『冬のソナタ』の撮影地、春川の名物だったタッカルビ(甘辛ソースをかけた鶏モモ肉の鉄板焼き)にチーズをトッピングしたものだ。

今回は本場のチーズタッカルビをはじめとする韓国の鶏牛豚の絶品メニューを5品紹介する。

年末年始、そして、2月8日に開幕する冬季五輪で韓国を訪れるときにぜひ食べてもらいたい。

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  • 『コサン・ミソ』のユッケビビンパ8000ウォン。ユッケがたっぷり使われているのがうれしい。読者が日本人なのでユッケビビンパを取り上げたが、この店ではカルビタン8000ウォンも大人気。何人かで訪れるときは、両方頼みたい
  • 仁寺洞通りにある『チェジュ・ミョンジャン』のコギククス7000ウォン
  • 骨の部分を中心に巻いた状態で出てくる『大関嶺韓牛タウン』の生(セン)カルビ200グラム50000ウォン。生カルビとはタレにからめたヤンニョム・カルビに対する言葉で、味付けしていない肉のこと。ヤンニョム・カルビも同価格
  • 韓屋(伝統家屋)を改装した『チェジュ・ミョンジャン』の外観。仁寺洞サゴリと呼ばれる四つ角を安国駅方向に進み、最初の路地を右折してすぐ
  • 『コサン・ミソ』のユッケビビンパは野菜もたっぷり。なかでも右上のシイタケは肉厚で風味豊かだった。韓国人は上にかかっている甘辛のタレが全体によくゆきわたるように念入りにかき混ぜるが、日本の人には適度にまぜて、肉や野菜そのものの味を生かすように食べてもらいたい

チーズタッカルビ(京畿道)

3000ウォンのチーズをトッピングすれば、話題のチーズタッカルビに。『ミストー・タッカルビ』

辛い食べ物にチーズを加えて、まろやかさを出すのは、韓国でも1990年代から人気があったのだが、それは日本人の舌にも合ったようだ。

2000年頃、プデチゲ(ハムやソーセージの辛い鍋)や辛ラーメンにチーズをのせたものを食べさせたら、目の色を変えて喜んだ日本人(特に女性)が多かったことを思い出した。

今、日本で大人気のチーズタッカルビもそんな食べ物のひとつ。タッカルビはプデチゲや辛ラーメンほど辛くないので日本人にも食べやすく、そこにチーズが加わることでまろやかさやコクが増す。それが日本人の胃袋をがっちりつかんだようだ。

冬ソナのオープニング場面に登場して人気を得た小さな島、ナミソムは日本からの訪問者こそかつてほどではないが、韓流熱風が全アジアに広がるとともに、ソウルからの日帰り旅行にうってつけの観光地として今も大変な人出だ。

島に渡る船が出るところにある駐車場には大型観光バスが何十台も乗りつけ、周囲にはタッカルビ専門店がたくさん集まっている。

そのひとつ『ミストー・タッカルビ』は、ナミソムの脇を流れる北漢江に面した大型店で、ランチタイムは平日でも常時満席に近い人気ぶり。

鶏のモモ肉は肉質がやわらかく新鮮さが伝わってくる。ソースもほどよい辛さで万人受けする味だ。


ミストー・タッカルビ
京畿道加平郡加平邑北漢江辺路1044-14(ナミソム駐車場内) TEL:031-582-2739
9:00~21:00 無休

タッコムタン(ソウル)

『ファンピョンチッ』のタッコムタン6000ウォン。地鶏はブロイラーのものと比べ肉に弾力がある

ソウルの明洞と東大門市場の中間辺りにあるホテルPJは、プンジョンホテルという名前だった70年代から日本人の利用が多い宿だ。

お昼どき、このホテルの入り口を背に、向かいにある大きな雑居ビルの左手を見ると人だかりがしている店がある。そこがタッコムタンと呼ばれる鶏胸肉煮込みスープの人気店『ファンピョンチッ』だ。

刻みネギがたっぷり浮かんだ澄んだあっさり塩味のスープには、脂肪分のほとんどない鶏胸肉がたっぷり入っている。

日本人に「好きな韓国料理は?」と問えば、かならず名前が挙がる料理にタッカンマリという鍋があるが、量が多いので一人旅のときには食べられないという声をよく聞く。タッコムタンは大ざっぱに言えば、一人用のタッカンマリのようものだ。

ランチタイムともなると、周辺の会社員や工員が集まってきては一心不乱にスプーンで汁を口に運んでいる姿が見られる。

この十数年、スタイリッシュなレストランが増えたソウルだが、この店はまだワールドカップも韓流も経験していなかったアジアっぽかったソウルの熱気を感じさせてくれる。

タッコムタンの味とともにぜひこの雰囲気を味わったもらいたい。


ファンピョンチッ
ソウル特別市中区仁峴洞2街135-13(ホテルPJの斜め前) TEL:02-2266-6875
11:00~22:00 公休日休

韓牛ユッケビビンパ(全羅北道完州郡)

『コサン・ミソ』のユッケビビンパ8000ウォン。ユッケがたっぷり使われているのがうれしい。読者が日本人なのでユッケビビンパを取り上げたが、この店ではカルビタン8000ウォンも大人気。何人かで訪れるときは、両方頼みたい

日本で気軽にユッケが食べられなくなって久しい。そのせいだろう、ソウルに来る日本人たちから「ユッケが食べられる店に連れて行ってください」とよく言われる。

私も20年以上前、日本の焼肉店でバイトをしていたことがあり、たまにまかないでとろけるような生肉をいただいたりしていたので、その気持ちはよくわかる。

ソウルだと東大門に近い広蔵市場に専門店が数軒集まったユッケ横丁がある。日本のそれと比べると肉にやや歯ごたえがあり、日本と同じものを期待した人は「?」となることもある。

しかし、これに慣れると韓国人同様“噛み味”として楽しめるようになり、たいてい病みつきになる。

ビビンパの故郷、食の都として日本人にもよく知られている全羅北道の全州市を取り囲む完州郡に、地元の高山韓牛というブランド肉のユッケをぜたいたくに使ったビビンパを出す店がある。

ユッケの量は120グラム以上。肉のやわらかさは広蔵市場のものと日本のものの中間くらい。ほどよい歯ごたえがあり、噛めばたちま口中に牛肉の旨味が広がる。地元の新鮮野菜もたっぷり使われていて、さすが食にうるさい全羅北道と納得せずにはいられない。

驚くべきはその価格、なんと8000ウォン! ソウルだったらこの倍近くの値付けになってもおかしくない。全州を訪れたら、かならず足をのばしたい美食スポットだ。


コサン・ミソ(高山味ソ)
全羅北道完州郡高山面ナムボンロ135 TEL:063-261-4088
11:00~21:00 無休