印南貴史監督(奥)と山岸一雄氏

16日、『ラーメンより大切なもの〜東池袋 大勝軒 50年の秘密〜』のトークショー付試写会がフジテレビのマルチシアターで行われ、本作の印南貴史監督と司会の松尾翠アナウンサーが登壇。サプライズゲストとして同店初代店主、山岸一雄氏も元気な姿を見せた。

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本作は東池袋大勝軒の創業者で“ラーメンの神様”山岸一雄の半生にスポットを当てた、フジテレビのドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」を再構成。10年以上撮りためた記録映像と山岸の故郷・長野の美しい情景を加え、長編映画用に新たに改編した一作だ。山岸と築いた信頼関係の上で10年以上、カメラを回した印南監督は、「この人は“何かある”と思いました」と最初に別の番組でロケを行った時のエピソードを披露。「その日は撮影クルーを帰して3時間ほどたわいもない話をした後、店内に板をしいて寝ますと(笑)。それがとても不思議で、特別な感じがしましたね」と山岸との衝撃的な出会いを回想した。

ラーメン界では神と呼ばれる山岸だが、印南監督の見方は異なるようで、「山岸さんはほかの仕事でも一生懸命にやって、名を成していた人だと思います。そういう人っていますよね? そういう人の生きている姿を、映像化して見せていければいいなと思っていました」と本作のコンセプトを説明。また、毎日来る常連や二時間経っても帰らない客、数百人以上の弟子がいるという山岸の人柄こそが着目ポイントだという印南監督は、「東池袋の大勝軒には、山岸さんを中心とした不思議な社会があった。それをいかに忠実に切り出せるか、そこに腐心しましたね」と山岸の魅力を解剖することにも意味があったと補足した。

イベント終盤には、会場にいたサプライズゲストの山岸氏が客席に挨拶。温かい拍手が届く中、印南監督は、「東池袋のラーメン屋さんのラーメンの話ではなくて、その仕事に就いた男の人の話です、だから美味しそうな画はないです(笑)。山岸一雄という人間と人生を観ていただいて、自分の人生に重ね合わすようなドキュメンタリー映画です。それこそ、自分にとって大切なものを考えていただければと思います」と最後にメッセージを寄せた。

『ラーメンより大切なもの〜東池袋 大勝軒 50年の秘密〜』
6月8日(土)より、シネマサンシャイン池袋ほか全国順次ロードショー

取材・文・写真:鴇田 崇