(左から)堤幸彦監督、竹中直人、貫地谷しほり、宅間孝行

女優の貫地谷しほりが、25日、東京・有楽町の丸の内TOEIで行われた主演作『くちづけ』の初日舞台あいさつに、共演する竹中直人、宅間孝行、メガホンを執った堤幸彦監督とともに登壇した。貫地谷にとっては初の主演映画で「初主演は人生1度きり。それがこの作品だなんていうれしすぎるし、ありがたい。愛情込めて育てた作品」と感無量の面持ちだった。

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本作は、昨年末に解散した宅間主宰の人気劇団「東京セレソンデラックス」の10周年記念公演作を実写映画化。知的障がい者たちの自立支援を目指すグループホーム“ひまわり荘”を舞台に、7歳で心の成長が止まった娘マコ(貫地谷)と、ひたむきに娘を愛し続ける漫画家の愛情いっぽん(竹中)の親子愛を描く。これまでにない難役に、貫地谷は「現場では辛いと思ったのは初めてかもしれない。いろんな思い出があり、うまく言葉になりません」と述懐。それでも「この作品と出会い、マコちゃんを演じられるなんて、私の人生はハッピーだなって思います」と晴れやかな表情だった。

貫地谷と竹中が父娘役を演じるのは本作で2度目ということもあり、「しほりちゃんの顔を見るとホッとする」(竹中)。撮影のほとんどが、東映大泉撮影所に立てられた“ひまわり荘”のセットで行われ、「僕自身、大好きな撮影所なので、毎日通えるだけで夢のような毎日。それに天候に左右されないのもいい(笑)」と振り返った。

「映画化されたのは奇跡」と語るのは、物語の生みの親でもある宅間。「脚本は書いたけど、そのまま撮影されず、ポシャる企画もたくさんある。でも今回は堤さんが監督をすると決まると、ありえないスピードで(映画化が)決まった。ラッキーに恵まれた」とやはり本作への思いは格別の様子だった。一方、堤監督は「子どもの頃から不条理なことにウジウジと悩んでいたが、この作品を通してエンターテインメント作品からもメッセージを発信できることを改めて感じた」と誇らしげにコメント。この日は初日初回上映に駆けつけたファンに、貫地谷ら登壇者が自ら“父の日の黄色いバラ”を手渡すサプライズが実施された。

『くちづけ』
公開中

取材・文・写真:内田 涼