ナイロン100℃の代表作『わが闇』再演に、初演キャストが集結!

2013.6.7 21:13配信
左から、坂井真紀、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、犬山イヌコ  撮影:吉田タカユキ(SOLTEC) ヘアメイク(ケラリーノ・サンドロヴィッチ):栗原由佳(ファリィ) 左から、坂井真紀、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、犬山イヌコ  撮影:吉田タカユキ(SOLTEC) ヘアメイク(ケラリーノ・サンドロヴィッチ):栗原由佳(ファリィ)

今年、結成20周年を迎えた劇団ナイロン100℃が記念企画公演を行っている。その締め括りとなる第三弾は、07年末の初演が好評を博した舞台『わが闇』だ。ある三姉妹と彼女らに関わる人々の織りなす日常から、人間の滑稽さや冷ややかさ、優しさが浮かび上がる、静かな熱を纏った家族の物語である。主宰で作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が再演の条件として初演時のキャストを全員招集。信頼の布陣とともに、演劇ファンが待ちわびる秀作の再構築に挑んでいる。

ナイロン100℃『わが闇』チケット情報

稽古場には予想していた“思い出し稽古”のようなゆとりの雰囲気はなく、全員が新作舞台に向かうかのように新鮮な好奇心を集中させていた。客演の岡田義徳へ向けてKERAが感情と動作のつながりを緻密に説明し、立ち稽古が丁寧に繰り返されていく。その度に相手役となる劇団員の松永玲子や三宅弘城が違う球(表現)を巧みに投げ込んで、場の表情を豊かに変化させていく様が面白い。続く三姉妹の長女(犬山イヌコ)と三女(坂井真紀)のシーンは、よどみない自然な対話から姉妹間の微妙な感情の対立が見てとれて、その精度の高さに初演の記憶がまざまざと甦った。KERAも終始口を挟まずに二人の演技を注視していたのが印象的だった。

稽古後の取材では、「台本を読んで、あらためて面白い! 新たな発見が多いと感じました。稽古時間の十分にある今、やるにふさわしい作品」と坂井。台本の仕上がりを追って稽古を進めた初演時を思い出し、犬山も「後半の動きはとくに時間とのせめぎ合いだったから、今回はもっといろんなことが試せるんじゃないかな」と意欲的だ。だがKERAは再演の構想について「ガラッと大きな変化を見せるものではない」と語る。

「僕を含めたスタッフ、キャストの全員が初演からの年月に蓄えたもの、あるいは衰えたもの。その人間の幅の変化でいいと思う。観客の目に見える形で伝わるものではないかもしれないけど、演劇でしか感じ取れない変化であることは確かだから」(KERA)。「すべての登場人物がぎっしりと奥行き深く描かれていて、会話が面白い」(犬山)。「人が生きていること。そのシンプルなテーマを強く感じて、どっぷりと溺れられるところが好き」(坂井)。女優陣が作品の魅力を上げるのを聞きながら、KERAは「こういう大きな作品は、もうそうそう書けないかもしれない」とつぶやいた。「そういう意味でも貴重な作品です。次はたぶん軽い作品になるかな。今後も定型は決めずに、ずっと自由な、楽な集団でいられたらと思います」。20年の確かな歩みが実感できる代表作を、ぜひ目に焼き付けておきたい。

公演は、6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで本多劇場にて。チケット発売中。

取材・文 上野紀子

いま人気の動画

     

人気記事ランキング