(左から)堤真一、福田雄一監督

青野春秋の人気漫画を実写化した『俺はまだ本気出してないだけ』で主人公の大黒シズオ役を怪演した堤真一と福田雄一監督に制作秘話をインタビュー。初対面の日、“堤ダークサイド”を目撃した福田監督が映画の成功を確信したことや、当初不安だった堤も撮影現場でアイデアやアドリブを繰り出すなど最終的に大黒シズオ役をモノにしたことを明かした。

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“本当の自分を探す”と会社を辞めた42歳の大黒シズオ(堤)は、ゲームに明け暮れる日々の上に、娘の鈴子(橋本愛)に借金をするなどダメ人間を極めていた。そのシズオが漫画家を目指し始めたことで騒動が勃発していくストーリーだが、原作と似ても似つかぬ容貌が早くに話題を集めた。これは堤本人も「絶対に自分では映画化は無理だと思った(笑)」と自覚はあったものの、堤を猛烈にプッシュした福田監督は「パブリックイメージと違う堤さんの側面を知っていたので、イケるという勝算が確実にありました」とシズオ役は堤以外に想定していなかったことを告白。不安な堤をよそに自信満々で準備を進めたという。

その側面は“堤ダークサイド”というらしく、聞いていた堤は「中華店での話でしょ?  僕は酔うとすごくヘンな感じになるみたいで、そのことです(笑)」とバツの悪そうな表情に。実は初めての食事会の時の印象が福田監督には強烈だったらしく、「飲み始めて2時間くらいで、急に空気を読まなくなる。その堤さんが最高で(笑)。初対面でガチガチに緊張していたけれど、終わる頃にはうっとうしかった(笑)」と福田監督も負けずにダークサイド発言! そして、その福田監督の勝算と予想は見事に的中。シズオがゲームに興じるシーンの撮影初日に、「この映画、成功ですね!」と本作のプロデューサに言い放ったという。

堤は、「映画独自のシズオ像を作り上げたというより、福田監督に言われたことを実践しただけです(笑)」と謙遜するが、まさしく怪演の表現に相当する強烈キャラを創出した。福田監督も「堤さんもノッていました(笑)。バイト中にイエッサー! と返事するとか、ジュースのピロピロ飲みとか、僕には絶対ない(笑)。堤さん発信のシズオ的な正解がガンガン出ているので、原作とは違う面白味が出ています」と満足気に完成作を送り出していた。

『俺はまだ本気出してないだけ』
6月15日(土)より、全国ロードショー

取材・文・写真:鴇田 崇