外の世界を見たくて、大学を辞めようと決めた

磯村勇斗 撮影:奥田耕平

と言っても、成瀬も最初から新しい環境に馴染めたわけではない。突然音楽隊に配属された成瀬は、ここは自分の居場所じゃないと心荒むときもあった。磯村自身もそんな葛藤を経験した時期はあっただろうか。

「大学を辞めたときは、ここは自分の居場所じゃないという気持ちはありましたね」

そう切り出して、磯村は当時の心境に想いを馳せた。

「演技の勉強をするために大学に入って。でも、大学にいると芝居の相手は学内の人たちだけ。あのときの自分はそこにとどまるより、もっと外の世界を見てみたかった。もっといろんな経験がしたくて中退することを決めました」

今の日本の教育・就職システムにおいて、大学に行くことはある種の“保険”でもある。その保険を捨てるには、相当な勇気が必要だ。

「大学を辞めることはまったく怖くなかったです。高校までは義務的なところがあると思うんですけど、大学に行くのは完全に自分の意思。だから辞めるのも自分の意思だろうと。自己責任だと思えば、気持ちは楽でしたね」

そう言えるのは、自分は俳優になるという強い意志があったから。磯村勇斗はやっぱり根っからの俳優なのだ。

「大学を辞めたことで、もっといろんなことに挑戦できるようになった。結果論になりますけど、僕にとってはプラスの選択でした」