12/14に南米王者・サントス(ブラジル)、翌日には欧州王者・バルセロナ(スペイン)が登場し、クラブワールドカップもいよいよ佳境を迎えるが、その前にバルサが世界最強にして世界最高だと改めて証明した。そう、12/11・リーガ・エスパニョーラでのレアル・マドリードとの“クラシコ”で、3-1の完勝を収めたのだ。

バルサ勝利を報じるuefa.comページ

   
















下馬評ではレアル・マドリード有利だった。

バルサよりも1試合消化試合が少ないにもかかわらず、首位レアルは2位バルサに勝ち点3差をつけていた。ここ10試合で7勝2分1敗・25得点3失点のバルサに対し、レアルは10連勝中、驚愕の39得点をマークしていたのだった。戦前、グアルディオラ監督は「今季のレアル・マドリードは弱点がない。非の打ち所がない成績を収めている。我々は最高のプレーをしなければ勝てない」と語っていたほどである。いつもなら、試合前の会見で挑発を繰り返し、心理戦に持ち込むモウリーニョ監督だが、今回はアシスタントコーチのカランカに代弁させ、黙して語らず。沈黙や挑発封印を自信の表れと取るのは、深読みが過ぎるか。

試合開始21秒、GK・バルデスのミスキックを逃さず、ベンゼマが決め、7分・セルヒオ・ラモスのコントロールミスからメッシが決定機をGK・カシージャスに阻まれたところまでは、レアルに追い風が吹いていた。

ただ、モウリーニョが試合後、語ったふたつのプレーが逆転負けを許す要因となった。敗因のひとつ目にモウリーニョ監督は、25分にクリスティアーノ・ロナウドが決定機を決められなかったことを挙げた。「我々がリードしていた時に迎えたチャンスで、クリスティアーノ・ロナウドが決めて2-0となっていたはずだ。あそこでゴールが決まっていれば、試合はまったく異なる結果になっていた」。そして、ふたつめの敗因には、30分のアレクシス・サンチェスの同点弾前をアシストしたメッシを、ラサナ・ディアラが止め切れなかったプレーを挙げた。「ルーズボールに対して思い切って足を出さないために、相手に楽にプレーさせてしまった。イエローカードを怖がるのは理解できるが、ボールに厳しく行く精神的なタフさがあれば、このような結果には終わらなかっただろう」

ふたつのプレーが勝敗を左右したのは同意できる。だが、自らをスペシャル・ワンと豪語するポルトガル人監督が語った「単なる幸運が試合の勝敗を分けた」という言葉には同意しかねる。モウリーニョはひとつ、戦術的なミスを犯した。

バルセロナは53分、シャビのボレーシュートがマルセロに当たりコースが変わり、オウンゴールとなる幸運を手に入れた。その8分後、モウリーニョはイエローカードを受けたラサナ・ディアラに代えて、ケディラを投入する。かつて、クラシコと言えば、退場者を出してきたトラウマか、同点に追いつく策を打たなかった。運ではなく、このモウリーニョの消極策が勝敗を決したのだ。

66分にイニエスタがバツグンのボディバランスでボールを運びメッシへパス。メッシもDFを引き付けながらドリブルし、絶妙のタイミングで右サイドのダニエウ・アウベスへボールを預けた。アウベスはダイレクトへ大外へのクロスを上げ、飛び込んできたセスクがヘッドを決めた。1-3とされた2分後、モウリーニョはMF・ディ・マリアに代えて、FW・イグアインを投入するが、時すでに遅し。

敵地・サンチャゴ・ベルナベウで完勝したグアルディオラは試合後、「ここで勝つためには最高のプレーをしなければならないが、今日我々はそのレベルに達することができた」と胸を張った。そして、勝利の立役者に意外な人物の名を挙げた。先制弾を許すミスを犯したGK・バルデスだ。ペップは「この勝利を象徴しているのがバルデスである。ミスの後でも、彼はおじけづくことなくロングボールを放り込まなかった。普通のGKならパスミスを恐れて大きく蹴っていただろう」と、守護神を称えた。しかも、グアルディオラ監督は前半から後半に向けて、システムを変更し、勝利を引き寄せる策士ぶりを見せ付けた。

あえて言おう。

今回のエル・クラシコは、グアルディオラとモウリーニョ、指揮官の差が勝敗を決した、と。 

あおやま・おりま 1994年の中部支局入りから、ぴあひと筋の編集人生。その大半はスポーツを担当する。元旦のサッカー天皇杯決勝から大晦日の格闘技まで、「365日いつ何時いかなる現場へも行く」が信条だったが、ここ最近は「現場はぼちぼち」。趣味は読書とスーパー銭湯通いと深酒。映画のマイベストはスカーフェイス、小説のマイベストはプリズンホテルと嗜好はかなり偏っている。