宝塚歌劇月組公演 撮影:三上富之 宝塚歌劇月組公演 撮影:三上富之

フランスの人気小説「アルセーヌ・ルパンシリーズ」の最新作で、作家モーリス・ルブランの没後70年となる2012年に発見され、話題となった『ルパン、最後の恋』。本作を、宝塚歌劇が世界で初めてミュージカル化。月組公演『ルパン-ARSENE LUPIN-』として7月12日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。ショー『Fantastic Energy!』との2本立てで上演中だ。

宝塚歌劇月組『ルパン-ARSENE LUPIN-』

20世紀初頭のパリでは、400万ポンドの金貨がロンドンから空輸されるという出来事で沸いていた。そんな中、怪盗ルパンから400万ポンドの強奪予告が届き、金貨が実際に姿を消してしまう。しかし、それは怪盗ルパンの名を借りた何者かによる陰謀。身に覚えのない罪を着せられた本当のルパンは、名誉を守るため、その策略を暴こうと決意する……。姿の見えない犯人を追う緊張感のあるストーリーに、ルパンの密かな恋を絡めて展開していく。

男のリアリズムを追求する正塚晴彦の演出。頭のキレる怪盗紳士ルパンが、少し影のあるクールな男として描かれている。そのルパンを演じるのは、男役トップスター龍真咲(りゅう・まさき)。シルクハットに長いマントのルパンスタイルが、龍にピッタリだ。令嬢カーラの後見人アルベールとして生活し、怪盗を封印していたルパンが、自らの名誉を守るため、そして愛する人を守るために再び危険を冒していく。公演前に「怪盗だけど、紳士的であることを強く意識したい」と龍が言っていたように、ルパンは誰に対しても冷静でスマートな印象。その中にも秘めた熱がきちんと伝わるように演じている。カーラ役の娘役トップスター愛希(まなき)れいかは、強い芯を持ちながらも、女性としての儚さを表している。

しっとりとした空気が流れるステージで笑いを誘うのが、警部ガニマール役の星条海斗(せいじょう・かいと)だ。ルパンを追い続けるも、うまくかわされて捕まえられないもどかしさを、絶妙な表情や動きで表現して心をくすぐる。憧花(とうか)ゆりの演じるフラヴィ判事とのコミカルなやり取りも見ものだ。ほかにも、専科から北翔海莉(ほくしょう・かいり)が作家モーリス・ルブラン役で出演し、舞台の空気をピリッと締めている。

一方、第二幕のショー『Fantastic Energy!』は、オープニングからトップスピード!入れ替わり立ち替わりの、まさにめくるめく展開。ロック、ラテンにスパニッシュ……と、ノンストップでエネルギッシュに展開していく。黒燕尾服での群舞もスタイリッシュかつ男らしさあふれる1曲。コスチュームもカラフルで夏らしくパワフルなステージに、こちらのパワーがチャージされるはず!

兵庫公演は8月12日(月)まで上演中。また、8月30日(金) ~ 10月6日(日)まで、東京宝塚劇場にて上演される。東京公演のチケットは7月28日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行抽選(プレリザーブ)を7月22日(月)11時まで受付中。

取材・文:黒石悦子