「夫は医者です。頭が良くスポーツも万能な一方、わたしは中卒で普通の事務員。なにか得意なことがあるわけでもなく、学歴コンプレックスを抱きながら生きてきました。

正反対なわたし達は知り合いの紹介で出会い、半年の交際期間を経て結婚。平凡なわたしが医者と結婚したので、当時は家族や友人にとても驚かれました。わたしはそれが誇らしく、ちょっぴり優越感に浸っていました。

しかし、夫のモラハラは結婚後すぐに始まりました。

夫はかなりの几帳面。リモコンや鍵など、物の位置が変わるのが許せず、少しでも移動させたら怒鳴られます。家の掃除に細かな指導が入るのは日常茶飯事で、同じ失敗を2回繰り返したときには反省文まで書かされました。

ミスをするわたしが悪いのだと思いつつ、夫の言動に悩まされる日々が続きました。

夫は子どもの前ではわたしに優しいので、息子2人はモラハラに気付いていません。

一度、夫の酷い言動を長男に相談したときも、信じてはもらえませんでした。もし気付いていたとしても、医師を目指す息子たちは夫を尊敬しているので、取り合ってくれなかったでしょう。

その一件以来、『わたしは家政婦だ』と自分に言い聞かせるようにしました。そうすることで、夫や息子に相手にされなくても仕方ないと思えるからです。

両親からは『離婚して実家に帰ってきていい』と言われています。しかし、わたしがそれを望んでいないのです。

理由は生活水準を落としたくないからです。わたしは、夫と結婚してから毎月数十万円ほどブランド物につぎ込んでいます。夫は家計のことには口出しをしないので、わたしの浪費を把握していません。

こんなことはやめなきゃと何度も思いましたが、もう元の生活に戻ることはできません。

ブランド物に囲まれて過ごせるのなら、モラハラに耐えて生きる方を選びます」(38歳/主婦)

几帳面すぎる夫に怒鳴られる日々。そしてそこから救ってくれない子どもたち。

自分を「家政婦」だと思い込む彼女の孤独は計り知れません。

それでも生涯一緒にいると決めたのは、今の裕福な生活を失いたくないから…。

こんな風に、何かを得るためにモラハラに耐えるという決意をした人は案外多いのかもしれませんね。

ライター・コラムニスト。人と人とのコミュニケーションを専門に扱うライター。TOEIC:840/TOCFL:BandC。恋愛コラムなども執筆。5時に夢中!(TOKYO MX)などでも度々コラムが取り上げられています。