「私の夫はとても優しい人でした。

付き合っていた頃はもちろん、結婚してからもその優しさは変わらないまま。料理が苦手な私のために、毎日夕飯やお弁当を作ってくれたり、会社まで送り迎えをしてくれたりと、甘やかされて幸せな日々を過ごしていました。

そんな彼がガラリと変わってしまったのは、娘が生まれてからのことです。

ある日、娘に離乳食をつくっていると、夫が『俺のご飯は?』とボソッと呟きました。

晩御飯をつくるのは夫の担当だったので戸惑っていると、『子どもにつくれるなら俺のご飯もつくれるだろう』と言い始めたのです。

夫の誕生日に娘が熱を出して旅行が中止になったときも、『子どもの健康管理もできないのか』と怒られる始末…。

それ以降、夫は何事においても『自分を最優先しろ』と命じるようになったのです。

突然始まった、赤ちゃん返りのようなモラハラは産後の私を苦しめました。

優しかった夫の変貌をなかなか受け入れることができず、娘を連れて家出をしたことも…。

そんな状況の中で、離婚を考えなかったわけではありません。ですが娘に私と同じ思いをさせたくない…それが別れない理由です。

私はシングルマザーの家庭に生まれました。

母は毎日夜中まで働き、私を女手一つで育ててくれました。そんな母のことはもちろん大好きだし感謝もしています。でもいまだに、小学校の父親参観や、運動会のお弁当の時間に自分だけ父親がいなかった寂しさが忘れられません。

だから、娘にはそんな思いをしてほしくないのです。

変わってしまった夫のことはもう好きではないし、昔のように仲良くしたいとも思えません。

ですが娘の大好きな『パパ』を奪うことは私にはできない。それが家族を続ける理由です」(女性/35歳/会社員)

結婚や子どもの誕生など、あることをきっかけに急にモラハラが始まるというのは実はよくある話です。

夫の突然の変化を受け入れられずに離婚を選択する妻たちは一定数います。

しかし一方で、こどもを想って家族を続けることを選ぶ人も少なくありません。

「愛するこどものために、もう愛せない夫と暮らし続ける」こんな事情を抱える仮面家族は実はあちこちにいるのかもしれませんね。

ライター・コラムニスト。人と人とのコミュニケーションを専門に扱うライター。TOEIC:840/TOCFL:BandC。恋愛コラムなども執筆。5時に夢中!(TOKYO MX)などでも度々コラムが取り上げられています。