左から、土屋雄作、藤沢文翁 左から、土屋雄作、藤沢文翁

従来の朗読劇にはなかったエンタテインメント性と、生演奏によるライヴ感を追求する新感覚・音楽朗読劇=SOUND THEATRE。その最新作が8月末に東京・シアタークリエで上演される『HYPNAGOGIA』だ。SOUND THEATREの生みの親にして作・脚本・演出の藤沢文翁と、音楽監督のヴァイオリニスト・土屋雄作に話を訊いた。

『HYPNAGOGIA』チケット情報

『HYPNAGOGIA』の初演は2005年のロンドン。このときはストレートプレイだったが、帰国した藤沢は2009年にSOUND THEATREの第1作として上演した。「この物語をきちんとやるには、大掛かりなセットが必要。お客さまの想像力をお借りする形なら、いろいろなことが可能になるかもしれない」という予想は見事的中し、視覚障害を持つ観客から「二度と観られないと思っていた舞台を観ることができた」という声も寄せられたという。

土屋はヴァイオリニストのパガニーニをモチーフにした『CROSS ROAD』からの参加で、SOUND THEATREの魅力について「音楽と役者さんのセリフが混じり合い、溶け合っていくんです。これは一観客として客席にいたときも、演奏者として舞台上にいるときにも感じました」と話す。「土屋くんは何より音楽監督として仕事がしやすかった」という藤沢は、それ以降の全作品の音楽監督を依頼し、コラボレーションを重ねてきた。日本では珍しい作家と音楽家のタッグは、大ヒットミュージカル『エリザベート』や『モーツァルト!』を生み出したM・クンツェ×S・リーヴァイのような関係性を目指しているという。

声優、落語家など様々なジャンルのパフォーマーが参加してきたSOUND THEATREだが、今回の読み手は北村有起哉、彩吹真央、米倉利紀。キャスティングの狙いについて「北村さんは子どもの部分を持った演技をされる方。宝塚男役スターだった彩吹さんには、ある種の男性性が求められる〝夢の中の女役〟を。そして米倉さんは何より声がいい」と藤沢。

2005年の上演時はロンドンテロの直後、2011年の初日前日には東日本大震災が起きたという『HYPNAGOGIA』。藤沢が「僕にとって〝宿命の子〟のようなこの作品を、あるべき姿にしたい」と語れば、「〝『HYPNAGOGIA』はこう〟という断定的な音楽を作りたい」と土屋も意欲を見せる。音楽とセリフの更なる融合が期待できそうだ。

公演は8月28日(水)・29日(木)、東京・シアタークリエにて。チケット発売中。

取材・文:山上裕子