森岡龍監督

ショートショートフィルムフェスティバルなどの開催で注目を集める短編映画。ただ、扱う映画祭は多くても、劇場公開は稀というのが現状だ。その中でこの度、日本の短編映画に焦点を当てたプロジェクト「JAPAN SHORTS」が始動! 第一弾プロジェクトとして、気鋭の若手監督たち6名の短編作品が劇場公開される。

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今回の上映作品は6本。すでに長編映画を発表し高い評価を得ている新鋭監督の顔が並ぶ。「あまちゃん」に出演するなど俳優としても活躍中の森岡龍監督の『Nostalgic Woods』は、失恋した自主映画監督が森でおかしな世界に迷い込むファンタジックな1作。監督は「ドラマの整合性といった長編映画に臨む際、自分がどこか縛られていた枠組みを、今回の短編では良い意味で無視する冒険ができた」と語る。

一方、国内外で数々の受賞経験を持つ勝又悠監督の『少女と、女』は、新田恵利を主演に「母性」というテーマに逆説的なアプローチで挑んだ野心作。監督は「10分の作品ながら1分に感じられるような全編が見せ場で濃密な時間を体感できる作品を目指した」と明かす。

また、『ダムライフ』が《ぴあフィルムフェスティバル》(以下PFF)でグランプリに輝いた北川仁監督の『りんご』は、池脇千鶴演じる被災地で極限状態に追い込まれた女性を主人公に希望を描く意欲作。監督は「内容や映像表現をどう凝縮するか試行錯誤した。今回の短編への挑戦は改めて自分の映画づくりを見つめ直す機会になった」と語る。

他にもカンヌ国際映画祭短編コンペティション部門にノミネートされた佐々木想監督の『隕石とインポテンツ』、『一秒の温度』がPFFでグランプリに輝いた井上真行監督の『夢を見た』、同じくPFF受賞経験のある中村拓朗監督の『I’m Home』と力作揃い。「JAPAN SHORTS」の野辺優子プロジェクト代表は「実は若手映画作家にとって短編映画は未来の扉を開く可能性が大いにあるもの。短編が国際映画祭で認められることで長編デビューを果たし、世界をフィールドにした創作活動へと結びつけた映画監督は多い。このように世界から自己を確立していくチャンスがあることを日本の若手監督たちはもっと意識していい。このプロジェクトは、日本の短編とその作り手を世界に発信する役割を担えればと思っている。また、上映機会の少ない短編映画の秀作を日本の観客に届ける場も作っていきたい」とプロジェクトの主旨を語る。なお、公開期間中、「KINEZO PREMIERE」でのオンライン上映も開始。今後、このプロジェクトがどんな広がりを見せるのか注目だ。

「JAPAN SHORTS」
8月24日(土)より新宿バルト9ほかで公開

取材・文・写真:水上賢治