『ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区』

1992年の『マルメロの陽光』以来、長編映画を発表していない巨匠ビクトル・エリセ監督の最新作が9月14日(土)から公開される。映画『ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区』に収められた4作品のうちの1作『割れたガラス』で、40分弱の中編作品だ。

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本作は“ポルトガル発祥の地”とも称される同地区を舞台にエリセ監督、『過去のない男』のアキ・カウリスマキ監督、『ヴァンダの部屋』のペドロ・コスタ監督、『コロンブス 永遠の海』のマノエル・ド・オリヴェイラ監督がそれぞれ新作を撮りおろした一大プロジェクトだ。

エリセ監督はスペイン出身の映画監督で、1973年に発表した『ミツバチのささやき』が圧倒的な評価を集め、日本でも繰り返しスクリーンで上映されている。しかし、エリセ監督は長編第2作『エル・スール』を発表するまでに10年、第3作『マルメロの陽光』を発表するまでにさらに10年を要しており、寡作なエリセ監督の新作を望む声は決して途切れることがなく、オムニバス作品などで短編を発表する度に大きな話題を集めている。

そんなエリセ監督の新作『割れたガラス』は長編ではないが40分弱の作品で、20世紀初頭に欧州第二の紡績工場として発展するも2002年に閉鎖したリオ・ヴィゼラ紡績繊維工場を舞台に、かつて工場で働いた労働者たちの声に耳を傾け、彼らの人生の1コマを丹念に描き出していく。本作はドキュメンタリー作品だが、冒頭に“ポルトガルでの映画のためのテスト”のテロップが登場することから、本作に登場するエピソードやイメージが全世界が待ち望む4本目の長編映画に何らかのかたちで活かされる可能性もあり、映画ファンには見逃せない作品になっている。

『ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区』
9月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー