豊響

1月8日の両国国技館では、3年ぶりに満員御礼の垂れ幕が下がった。『大相撲一月場所』では声出し応援も解禁。コロナ禍前の3年前の『一月場所』以来、徐々にではあるが土俵にあるべき姿が戻りつつある。

『一月場所』が千秋楽を迎えた1週間後には、豊響が国技館の土俵で最後の勇姿を見せる。『豊響引退山科襲名披露大相撲』が開催。ふれ太鼓に初っ切り、相撲甚句、髪結い実演とともに横綱綱締め実演、十両と幕内の全取組、そして豊響断髪式が行われるのだ。

豊響は2005年『一月場所』で初土俵を踏み、2007年『一月場所』で新十両に昇進し、同年『七月場所』では新入幕を果たした。最高位は2008年『十一月場所』の東前頭2枚目、三賞は敢闘賞を3回受賞した。身上は押し相撲である。「平成の猛牛」のニックネーム通り、2008年に左目の網膜剥離を患っても、立合いのぶつかましから押し相撲を貫いた。2018年1月には不整脈を発症し、『三月場所』から幕下に陥落。その後関取復帰は叶わず、2021年に『一月場所』から3場所連続で休場となり、6月に引退会見を行ったのだった。

豊響は思い出の一番に2012年『五月場所』で横綱白鵬から金星を獲得した一番を挙げた。横綱の鋭い立合いで一気に土俵際へ追い詰められた豊響だが、絶妙な小手投げ一閃。軍配は横綱に上がったものの物言いがつき、行事差し違えと発表されると、満員の国技館は爆発。座布団が舞う中で勝ち名乗りを受けた豊響は土俵下の師匠・境川親方と目が合うと、堪え切れずに涙を流したのだった。

奇しくも白鵬は前日の1月28日(土)に国技館で『白鵬引退宮城野襲名引退大相撲』を執り行う。『豊響引退山科襲名披露大相撲』は1月29日(日)・両国国技館にて実施。チケット発売中。