凰稀かなめ  撮影:奥村達也 凰稀かなめ  撮影:奥村達也

マーガレット・ミッチェルのベストセラー小説が原作で、ハリウッド史に燦然と輝く名作『風と共に去りぬ』。宝塚歌劇では1977年に初演、何度も再演が重ねられてきた代表作のひとつである本作が、100周年を目前にした宙組により上演される。男役の極みといえるレット・バトラー役に挑むトップスター、凰稀(おうき)かなめに心境を訊いた。

宝塚歌劇宙組『風と共に去りぬ』チケット情報

舞台は、南北戦争動乱期の1860年代アメリカ南部。凰稀が演じるバトラーは、農場主の娘、スカーレット・オハラの美しさと強さに惹かれた男。皮肉屋でありながら、包容力、色気、優しさ、逞しさ…など、さまざまな魅力を持った人物だ。これまで数々の男役を演じてきた凰稀も、バトラー役はひと筋縄ではいかない様子だ。「人間として、男役として一から洗い直している状況です。もちろん、これまで演じてきた役から得たものはとても大きくて、いつもは積み上げてきたものを次に繋がるようにやってきましたが、それだけでは太刀打ちできないと感じています。このバトラーには男役のすべてが詰まっていますから」。またヒロイン・スカーレットは、男役の朝夏まなと、七海ひろきが役替わりで演じる。「それぞれが反応も表現の仕方も違い、面白いです。それに合わせて私の表現も変わるはずなので、そのちょっとした違いも楽しんでいただきたいと思います」

時を経てもなお愛され続ける本作の一番の魅力については、「人の強さ」だと話す。「ひとりでも生きていける、強く前に進んでいくエネルギーが描かれているところではないでしょうか。今の時代はいろんなものが繋がっていて、例えば、携帯電話がないと何もできなくなってしまったり、不安になる人が多いと思います。でもバトラーを含め、この作品の登場人物たちは、それがなくても自分で行動していける力がある。この時代に生きていた人たちの生命力の強さを見せたい」と語った。

トップ就任から約1年。濃密な時間を過ごした凰稀は「もう3年くらいやってるんじゃないかと思います(笑)」と笑顔を見せる。「ファンの方から“1年経ちますね”と言って頂くと、まだ1年だったのか、それだけ濃い1年でしたし、これから先も濃い日々が待っているな、と。気持ちとしては(就任)当時より落ち着いてきましたが、常に新しいことに挑戦させて頂いているので、やりがいも大きいです。これからも一作一作を大事にして、悔いのないように取り組んでいきたいと思います」

公演は9月27日(金)から11月4日(月・祝)まで兵庫・宝塚大劇場、11月22日(金)から12月23日(月・祝)まで東京宝塚劇場にて上演される。

取材・文:黒石悦子