キャラメルボックス『ケンジ先生』稽古場より。どんぐりチーム キャラメルボックス『ケンジ先生』稽古場より。どんぐりチーム

演劇集団キャラメルボックスのオータムカーニバル『ケンジ先生』が、9月20日(金)、東京・サンシャイン劇場で開幕する。本作は1996年の初演、1998年の再演以来、15年ぶり3度目の上演。そこで舞台初日が間近に迫った9月某日、劇団員たちの熱気溢れる稽古場に足を運んだ。

キャラメルボックス『ケンジ先生』チケット情報

今回の上演は左東広之主演のどんぐりチームと、阿部丈二主演の山猫チームがあり、全11役Wキャストの2チーム制(※23日のみ2チームミックス)で上演する。すでに稽古終盤のこの日は、山猫チーム、どんぐりチームの順で、本番さながらの通し稽古が行われた。ちなみに両チームとも前説(=開演前の注意事項などを劇団員が観客に説明すること)の稽古から始まるところは、何ともサービス精神あふれるキャラメルボックスらしい。

物語は2098年、100年前に作られたアンドロイドの先生“ケンジ1998”が、孫の誕生日プレゼントにと、ナガサカ家のおばあちゃんに買われるところから始まる。左東、阿部が演じるのがこのケンジ先生なのだが、真っすぐで一本気の左東と、どこか飄々とした軽やかさのある阿部。タイプの異なる俳優が同じ役柄を演じることで、これほど作品の印象まで違ってくるのかと驚かされる。どんぐりチームは脚本に対して正攻法で向き合い、より感動できる作品に。一方の山猫チームは、全体的に余白が多く、遊び心がふんだんに盛り込まれた作品へと仕上がっている。

初演、再演では子供を意識した作品づくりがされたということだが、今回は大人も楽しめる舞台へと進化。イマドキのネタを随所に挟み込み、大いに笑いを誘ったかと思うと、“いい人間になるための勉強”をアンドロイドから教わるなど、未来の社会に対する警鐘とも思えるメッセージには、改めてドキリとさせられる。またフォーメーションダンスに殺陣、歌、カーアクション(!?)と、本作にはエンターテインメント要素も非常に多い。それだけに、物語終盤には劇団員全員が汗だく。だがそういった中でも誰ひとり手を抜かず、それぞれが声をかけ合い、高め合う姿に、劇団としての理想形を見た気がした。

2チームの通し稽古が終わると、演出の成井豊、真柴あずきを中心に輪を作り、細かな修正点を話し合う。成井、真柴のダメ出しは、多くがひとつの提案であり、そこから劇団員たちに考えさせる余地を残す。それが劇団員を成長させていることは、もちろん言うまでもない。そんな彼ら彼女らのきらめく汗の結晶『ケンジ先生』の幕が開くのは、もう間もなくである。公演は9月25日(水)まで。チケット発売中。

取材・文:野上瑠美子