『クロニクル』 (C) 2011 Twentieth Century Fox

どこにでもいる若者が、突如として超人能力を身につけ、とまどいながらもその能力を駆使していく。そんな“ティーン超能力映画”は、大きく分けると2つのパターンがある。ひとつはシリアス系。超人能力でヒーローとなる『スパイダーマン』や、壮絶な復讐劇になだれ込む『キャリー』が代表例だ。もうひとつは、おチャラケ系。先日まで放映されていたドラマ『みんな!エスパーだよ』や、続編も作られた『超能力学園Z』のように、エロ系も含むバカバカしい行為に超能力を使って笑わせる。

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では、この『クロニクル』はどうか?結論から言えば、両者のミックス型だ。主人公アンドリューがビデオカメラに話しかける冒頭は、高校生の屈折、不安定な家族関係を想像させてやや深刻だが、前半は基本的に軽いノリでテンポよく観る者を引き込んでいく。おチャラケ超能力映画の定番であるスカートめくりを、現在の作品で堂々とやってしまうあたりも、逆にすがすがしい。脚本はマイケル・ランディス。比較したくなる前述の『超能力学園Z』が82年の作品であり、お父さん、ジョン・ランディスの代表作『ブルース・ブラザース』『狼男アメリカン』が生まれたのが、それぞれ80年、81年と、当時の暴走的、開放的おもしろさが、父からの遺伝子で作品に無意識に表れた……と勝手に解釈したくもなる。人付き合いが苦手のアンドリュー、社交的なマット、体育会系で校内のスター、スティーヴと、主人公3人が“キャラ立ち”しているのも、作品としてのいい意味での軽さを強調するうえで効果的。

そして3人が能力に磨きをかける中盤からは、アンドリューの周囲だけだったシビアな空気が、3人の関係性に忍び寄り、作品のムードも転調。アクション映像も急激にハード化し、ここで“軽さ”と“シリアス”という、ティーン超能力映画の2大特色を、本作は同時に保持することになる。アンドリュー役のデイン・デハーンが『スパイダーマン』の次回作で友人ハリー役に抜擢され、マット役のアレックス・ラッセルが新たな『キャリー』に出演という、シビア系超能力ムービーとの妙な関連性はたまたまだが、そんな偶然が起こるのも、本作の奇跡かもしれない。

文:斉藤博昭

『クロニクル』
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