国内最大の電機/ITの総合見本市、CEATECでは、遠くない未来に我々の生活で使われるであろう最新技術が公開されていた。なかでも目を引いたのは、新しいインターフェース。これまではキーボードやマウス、タッチパネルなどで情報を入力していたが、遠くない未来、からだを動かすだけで操作できるようになるかもしれない。

●メガネで仮想の映像を「見る」「操作する」ドコモのインテリジェントグラス

体験コーナーに長蛇の列をつくっていたのが、NTTドコモの「インテリジェントグラス」だ。メガネ型のデバイスを装着し、視野に各種情報を表示して閲覧・操作することができる。

ドコモは使用シーンに合わせて「手ぶらでムービー」「見るだけインフォ(顔認識)」「見るだけインフォ(文字認識)」「なんでもインターフェース」「空間インターフェース」の五つの利用シーンを紹介した。

「手ぶらでムービー」は、その名の通り、タブレットなどのデバイスを持たずに動画を視聴できる。インテリジェントグラス越しに、実際の映像に重なるように右下にスマートフォンの画面が、中央に再生中の動画を表示。現実の背景も見えるので、動画視聴中も周辺の状況を確認できる。

「見るだけインフォ(顔認識/文字認識)」は、インテリジェントグラスに装着したカメラで、対面している人の顔や外国語のメニュー・看板を読み取り、顔を認識して人物にひもづいた情報を表示したり、外国語を翻訳して和訳を表示したりする。

「なんでもインターフェース」は、身の回りにあるものをディスプレイやキーボードとして利用できる。インテリジェントグラスを装着し、さらに指に指輪型のデバイスを装着。指輪型のデバイスをつけた指で、例えばノートやボードなどを2回タップすると、インテリジェントグラス越しに操作画面を表示する。操作は指輪型のデバイスをはめた指で行う。アプリを起動したり、スワイプをして画面を切り替えたりできる。

「空間インターフェース」は、現実の背景に、仮想のアイコンやキャラクターを表示。また、現れたアイコンやキャラクターを指や手などで触って、現実の物体を動かすような感覚で操作できる。

デモンストレーションでは、上空から降ってくるドコモダケを手でキャッチしたり、手の上で転がしたりしていた。

●手足を動かして操作するインテルのジェスチャーコントロール

インテルのブースでは、ジェスチャーコントロールのデモンストレーションが注目を集めていた。ウェブカメラやセンサで人を認識し、人の動き、つまりジェスチャーで機器などを操作できるもの。

この機能を紹介する最大のデモンストレーションが、ブース中央のマルチスクリーンだ。スクリーンの上部にカメラと赤外線センサを取りつけ、スクリーン前の風景をスクリーンに表示。センサが人を検知すると、風船のCGを実際の映像に重ね合わせて表示していた。

この仮想の風船は、スクリーンの前に立った人が風船に触るように手足を動かすとふわふわ移動したり、触れると風船が割れてキャンディが飛び出てきたりする。

●スピーカーの常識が変わる? 京セラの超薄型スピーカー

入力機器ではないが、驚くべきものが出力機器になっていたので紹介しよう。京セラは、薄型テレビ向けに超薄型・軽量の「ピエゾフィルムスピーカー」を展示した。この「ピエゾフィルムスピーカー」は、わずか1mmという驚くべき厚さなのだ。

一般的な電磁式スピーカーは、マグネットとコイル、振動板で構成されているので、どうしても物理的な厚さが必要だ。しかし、京セラが開発した「ピエゾフィルムスピーカー」は、電圧によって体積が変化するピエゾ素子と樹脂フィルムを組み合わせもので、ピエゾ素子の振動がフィルムに伝わり、面全体が細かく波打つことで、空気が共鳴し音が広がる仕組み。

今後。薄型テレビだけでなく、スマートフォンや携帯電話用ディスプレイに採用する予定だという。「ピエゾフィルムスピーカー」は、技術開発力が評価されて「CEATEC AWARD」の経済産業大臣賞を受賞した。

このほか、参考展示していた円柱型の「振動スピーカー」もおもしろかった。「ピエゾフィルムスピーカー」の技術を応用したもので、中央にピエゾ素子を埋め込み、平面に接触させることで、接触物が振動板の役割を果たし、音を鳴らす。つまり、机や壁など身の回りのものが擬似的にスピーカーに変わるのだ。

デモンストレーションでは、「振動スピーカー」をアクリル板に置いて音を鳴らしていた。「振動スピーカー」から音が出ているのでは、とつまみ上げると、振動させるものがなくなるので音がぴたりと止む。

これが将来製品化されたら、と考えると楽しみだ。例えば、壁などに設置すれば壁全体から音が響くようになる。いまは5.1chや7.1chのようにスピーカーを点で置いているが、これなら壁全体が音を鳴らすので、まさに包み込まれるような音を楽しめるに違いない。