トム・ハンクス

トム・ハンクスがアカデミー賞候補との呼び声も高い主演作『キャプテン・フィリップス』を携えて、ポール・グリーングラス監督と共に来日。18日に記者会見を行なった。

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2009年にアメリカ国籍の貨物船がソマリアの海賊に襲撃された事件を元にした本作。「事件の存在自体は知ってはいましたが、当時は軽く聞き流しており、詳細は知らなかった」というハンクス。その後、人質となるフィリップス船長の役を演じるにあたり、2度にわたりフィリップス氏本人と会って話したそうで「本当に普通の気さくな方で驚きました。家でTVでバスケの試合を観て、リクライニングチェアに座ってビールを飲んで、という感じでね。仕事のことや事件について詳しく、非常にオープンに語ってもらいました」と明かす。

映画の75%を占める海上シーンの撮影は実際に60日間にわたって行われた。グリーングラス監督は「1日に12時間から14時間をかけて撮影をしたけど、荒波にもまれながらで疲労が蓄積していったよ。大きな船なのに波のうねりを感じるんだ。でも映画作りにおいては課題はチャンスでもある。海上での撮影を実際に行なうことで(事実に)忠実に撮影ができたよ」と満足そうにうなづく。

特にラストシーンの撮影では、本物の駆逐艦の乗組員を急遽、撮影に参加させるという“荒技”も! ハンクスは「船上の医務室での撮影で、予定外のものだったけど、すでにほとんどの撮影を終えている状態で僕らもスタッフも全てが頭に入っている状態だったんだ。当然、医療チームは本物だから(腕前は)バッチリだし、まさしく勘で飛び込んでいった感じだね。思いがけないところで信念を持って撮るというのはポールの真骨頂であり、自由な演技が生まれたと思う」と充実した表情を見せた。

監督は本作を“クライムストーリー”と説明するが、一方で海賊行為が生まれる社会情勢についてハンクスは「映画では“バッドガイ(悪者)”が描かれてはいるけど、彼らはそうするに至る背景を持っているし、政府の腐敗や貧しさによる絶望を背負っているんだ。この物語は世の不公平を伝えていると思う。だからと言って海賊たちへの追及の手を緩めることはできないけど、ポールは『最も危険なことは、生きる目的のない若者に銃を与えることだ』と言ってる。彼らの行為を許すわけではないけど、この映画を多くの人に観てもらうことは意義のあることだと感じてるよ」と力強く語った。

ハンクスに対しては3度目のアカデミー賞主演男優賞を期待する声もあるが当人は「アカデミー賞ってのはワールドカップとパンケーキが合わさったようなものだね。招かれれば楽しいパーティだから、招かれたら楽しむよ」ととぼけた口調で語り、笑いを誘っていた。

『キャプテン・フィリップス』
11月29日(金)全国公開