高校2年生の「キマリ」こと玉木マリ(堀内まり菜)は、南極に行こうとしている小淵沢報瀬(石井陽菜)と出会う。ふたりはその後出会った三宅日向(岸みゆ)、白石結月(北澤早紀)と共に民間南極観測隊に参加し、南極に向かう。その旅路で彼女たちは何を思うのか……?

 2018年に放送された同名のテレビアニメを原作とし、南極を目指す4人の少女の物語を描く舞台「宇宙よりも遠い場所」。演出を手がけるのは、劇団MONO代表の土田英生だ。軽快なテンポの会話を通して人間の姿を描くことに定評のある彼、制作側からはアニメの再現ではなく土田流で「2.5次元舞台とそうでない舞台の垣根を壊す」ことを求められたという。しかも土田の叔父はかつて南極越冬隊に参加、土産の南極の石が今でも実家にある。ある意味、出合うべくして出合ったのかもしれない。


 南極観測隊の隊長・藤堂吟役の桑原裕子は「女子高生たち4人の『どこかに飛び出したい』気持ちは、私自身も若い頃感じていたもの。舞台はより濃密に、悩みを乗り越えていく姿が描かれる」と語る。観測船の船長・迎千秋役の中村まことも「大人の自分だって今ももがいているし、世代を問わず一緒。若い世代はもちろん、大人にもぜひ見てもらいたい作品ですね」と話す。

 吟は「最後の最後に自分の内面をさらけ出す姿が、普段は割と弱気なのにいざとなると凛としている桑原と重なった」という土田。桑原も「親友の子どもとどう付き合ったら良いかわからない不器用さ、でも同じものを目指しているなら通じ合えるはずだという信念。そういう素敵なところを表現したい」と語った。
また迎は「常にニコニコ、なんでも受けとめるお父さん的キャラクター。まことさんの一見変だけれど実はすごく真面目なものを感じさせる芝居や、周りの人のことをよく見て気遣う姿と重なった」と土田。中村も「僕の持ち味を活かして加えてくださった部分も、すごく面白い」とする。

 物語の中心となる若手キャストへの期待も大きい。土田は彼女たちが積極的に意見を出し合う姿を見て、「これはいける」と感じたそうだ。良い空気の中から生み出される今作を「隣の人への嫉妬や他者との関わり方が、綺麗事ではなく描かれた作品。普遍的な話だから誰もが自分にとっての思春期を感じられるし、それを真っ当に乗り越える素晴らしさを描いています。ぜひ楽しみにしていただきたいですね」と土田は締めくくった。

 5月17日(水)~21日(日)、渋谷区文化総合センター大和田・伝承ホールにて。

取材・文:金井まゆみ