吉田栄作、谷花音  撮影:源 賀津己 吉田栄作、谷花音  撮影:源 賀津己

後藤ひろひと作、G2演出による『「Paco~パコと魔法の絵本from「ガマ王子 vsザリガニ魔人」』が2014年2月シアタークリエ、3月全国各地で上演される。『人間風車』『ダブリンの鐘つきカビ人間』などを送り出した作・後藤ひろひと・演出・G2コンビによって04年、08年と上演(タイトルは『MIDSUMMER CAROL~ガマ王子とザリガニ魔人~』)、08年に中島哲也監督によって『パコと魔法の絵本』のタイトルで映画化された作品。爆笑を呼ぶ場面をちりばめながら、最後には豊かな感動が広がる傑作ファンタジーだ。今回は初演から一貫して同じ役で出演する山内圭哉以外はキャストを一新しての上演となる。

『Paco~パコと魔法の絵本~ from「ガマ王子vsザリガニ魔人」』チケット情報

頑固で偏屈な老人、大貫(西岡徳馬)は入院している病院の嫌われ者。出会った不思議な少女パコにも冷たく当たるが、パコのある秘密を知ることになる。パコを演じるのは、舞台初出演の谷花音(同役ダブルキャストにキッド咲麗花)。シアタークリエでの最年少主演(9歳)となる。

「パコは元気な女の子だけど、ちょっと寂しいというか、可哀想だなと思うところもあります。パコと自分が似てるのは、忘れっぽいところ(笑)。自分も朝ご飯に何を食べたかとか、たまに忘れちゃうから」と、天真爛漫な笑顔を見せる。

谷が心配なのは「ドラマは間違えたらやり直せるけど、舞台は本番1回だけだから大丈夫かなあ」ということ。「大丈夫!」と優しく声をかけたのは吉田栄作。「舞台では政治的な問題が含まれるような作品が多かったので、こういうほのぼのとした、笑えてちゃんと涙が流せる作品に出るのは初めて」という。

吉田が演じるのは大貫老人とパコを見守るキーパーソンとなる医師、浅野。「僕が初演の映像を見て印象に残ったのは、大貫に『涙の止め方がわからない』と聞かれて浅野が答えるシーン。ここの台詞があったから、僕は『Paco』に出ようと思ったのかもしれないな。初演の浅野役の山崎一さんが素晴らしかったけれど、それは意識しないでやりたい。変に笑わせようと思わずに、僕は僕なりに浅野ができあがればいいかなと思います」。

パコと関わることで、大貫だけでなく入院患者たちも変わっていく様子はまさに「大人のおとぎ話」。人が人と触れ合うことで「奇跡」のような瞬間を呼び起こせるのだと実感させられる。「浅野は『大貫をパコに近づけたら危険かな』と思いながらも、『ふたりが一緒にいたら、きっとよい影響を与え合えるはずだ』と信じて見守っている。大貫はパコと触れ合うことで、心が洗われていくんです。命には限りがあるからこそ人と関わり合い、人に優しくしないといけないんだと自分自身も考えさせられた。純粋に感動できる作品です」(吉田)、「面白いところも泣けるところもあるから、ぜひ劇場に見に来て下さい!」(谷)。

公演は2014年2月7日(金)から25日(火)まで東京・シアタークリエにて。チケットの一般発売は11月9日(土)午前10時より。

取材・文:大原 薫(演劇ライター)