イグナシオ・フェレラス監督

認知症を描いたスペインの長編アニメーション『しわ』のブルーレイ&DVDが11月6日(水)、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンから発売される。プロモーションのため、来日を果たしたイグナシオ・フェレラス監督が取材に応じ、本作にこめた思いや日本公開のきっかけを作った高畑勲監督との交友について語った。

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映画は養護老人施設に入所した元銀行員の主人公・エミリオが、徐々に進行するアルツハイマーと向き合い、施設の仲間たちと共に残された人生を謳歌する姿を描いた。今年6月に、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーの配給で日本公開され、認知症という重いテーマを扱いながら、異例のヒットを記録した。

「社会における高齢者の立場は、先進国が抱える大きな問題のひとつ。日本でも共通した問題として受け入れてもらえたのはうれしいこと」とフェレラス監督。叔父が40年に渡り日本で暮らしている“縁”もあり、「私自身が日本のアニメや文化に強く影響を受けているので、日本の皆さんに作品を楽しんでもらえたことも光栄ですね」と笑顔を見せる。

アニメーションにおいて、動きの少ない高齢者に命を吹き込むのは、困難な課題だ。「カメラの動きやタイミング、画面の構成、演出的な“遊び”を加えることで彼らの心情や、取り巻く空気感を描きたかった」(フェレラス監督)。温かみのある手描きアニメーションの世界はぜひ、ブルーレイ&DVDで繰り返し、楽しみたい。「確かに2度、3度と観るうち、違う発見をしてもらえるとうれしいですね。私も大好きな『火垂るの墓』を観ると、そのたび号泣してしまうんです」とフェレラス監督。

劇場公開をPRするため先日、来日した際には、尊敬する高畑監督(78歳)と対面したといい「とてもお若く、力強い握手が印象的でした。高畑さんにとって78歳というのは、単なる数字以上の意味はないんでしょうね。一緒に夕食を食べ、私はホテルに帰りましたが、高畑さんはそのままスタジオに戻られた。そのパワーに圧倒されました」。最新作『かぐや姫の物語』(11月23日(土)公開)の一部映像も目にしたそうで「衰えをまったく感じさせない素晴らしいもの」と本編完成に期待を寄せていた。

『しわ』
ブルーレイ&DVDは11月6日発売
ブルーレイ 4935円(税込)
DVD 3990円(税込)
発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

(c)2011 Perro Verde Films - Cromosoma, S.A.

取材・文・撮影/内田涼