(左から)岡田将生、長澤まさみ

いくえみ綾(りょう)の漫画の初の実写化となる『潔く柔く』で物語の軸となるカンナと禄を演じた長澤まさみと岡田将生は意外にも本作が初共演となった。10代の頃から人気の原作を持つ作品で主役を張ってきたふたりだが、絶大な人気を誇る今回の原作、自身の役柄、そして同じ傷を抱え支え合う者として存在する互いの役柄にどう向き合ったのか?

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幼なじみを失くした心の傷が癒えぬカンナと自分のせいで彼を慕う同級生を死なせてしまったという罪悪感を抱え続ける禄。そんなふたりが再生への一歩を歩み出していくさまを描き出す。

長澤自身、いくえみ作品のファンであり原作の「潔く柔く」も強い思い入れを持って読んでいたという。熱烈なファンを持つ漫画の映画化という点に関して普段は「私は映画といったらこれまで必ずと言っていいほど原作のある作品だったので」と余計な気負いを感じないという長澤だが、自分が大好きな作品のキャラクターを演じるということには、これまでにない不安や迷いを覚えたようだ。「最初は『私じゃない方がいいんじゃ…?』とも思っていたんですが、原作のカンナの前向きな姿、つらくても生きることをやめずに前に進もうとするところが好きだったのを思い出して、後押しされたような気持ちで引き受けました」。岡田は元々、原作を知らなかったそうだが「台本を読んでプロデューサーにお会いして、そこで『大人気の漫画で』とプレッシャーを掛けられました。そんな余計な言葉いらないよ! と思いつつ(笑)。プロデューサーのその凄い熱量に応えようという気持ちはありましたね」と振り返る。

自分の中の時を止めてしまうほどの心の傷を抱え、笑っていてもどこか寂しげに見えるカンナを演じるにあたり長澤は「漫画を教科書に」臨んだ。「とにかく丁寧に演じたいという気持ちでした。ひとつひとつの心の動き、身体や目の動きでカンナが伝わればと思いました。笑っているのに寂しげというのは、カンナの代名詞というか原作にもそういう描写があるので強く意識しましたね」。岡田は、禄が少しずつカンナに近づいていく“距離感”を大切にした。「(罪悪感は)なくなんないよ、そんなもの。一生、抱えて生きてくんだよ。」――カンナに諭すように、そして自身に言い聞かせるように発したセリフが強く印象に残っているという。「カンナに出会うことで自分の過去に徐々に向き合っていくというのは意識しました。(セリフは)まさにそうだと思うし、そんな思いは僕の中にもある。禄が自分と似ているとは思わないけど…憧れますね」。

互いについて長澤が「どこに行っても愛されキャラ。岡田くんがひと言何か言えばみんなが笑う」と評せば、岡田は「常に明るくて笑顔。でもたまに、毒を吐くんです(笑)。でもそれは意外ではなくて、そうあってほしいし素敵です」と語る。時に切なく、そして温かいふたりの心の触れ合いを映画の中から感じてほしい。

『潔く柔く』
公開中

取材・文・写真:黒豆直樹